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ちょっとピンクな功績

  • 2011年09月16日(金) 18時00分
 『ちょっとピンクな話』(9月7日付)でも本人から報告があったが、内田利雄騎手が釜山から帰国した。釜山は基本的に週2日の開催で、日曜日はソウルと同時開催のためレース数が少ないことを考えると、10カ月間での69勝は、異国の地ということを考えれば恐れ入るというほかない。しかも来月には50歳になるというから、さらに驚きだ。

 そのコラムの最後では、次なる騎乗先は次回発表となっていたが、岩手競馬の公式サイトでは、10月1日から11月21日まで4開催、21日間の期間限定騎乗が決定と発表された。その後、来年は1月30日から3月30日まで浦和に所属して南関東を中心とした騎乗もすでに決まっている。

 地方競馬では、各地のトップジョッキーが南関東を目指し、また若手騎手がいわゆる“武者修行”と称して少しでも乗鞍を確保できそうな競馬場で騎乗するのは、もはや当たり前のようになった。また重賞レースに限っては、依頼さえあれば所属に関係なくどの競馬場のレースでも騎乗できる。

 こうした道を切り開くきっかけとなった内田騎手の功績はとてつもなく大きい。時代の流れから、いつかはこうしてある程度所属に関係なく乗れるようにはなっただろうが、あのタイミングでルールを動かしたのは、まさしく内田騎手だった。

 あのタイミングとは、2005年3月の宇都宮競馬廃止だ。

 内田騎手は、もともと地方競馬の騎手免許が全国共通であることから移籍という道は選ばず、全国の競馬場で乗ろうと考え、各地の主催者や厩舎関係者に連絡をとってお願いを続けた。そして最初に、「期間限定なら」ということで了承を得たのが岩手競馬だった。

 今年10月からの騎乗で、内田騎手が岩手に期間限定所属となるのは、05年以降6回目(08年は釜山遠征で岩手での騎乗はなし)。そうした経緯もあり、内田騎手は岩手を第2の故郷と考えているようだ。

 内田騎手の功績としてはもうひとつ、全国の競馬場で騎乗する中で、若手の見本となっているということもある。それは日本だけにとどまらず、先の内田騎手のコラムでもわかるとおり、日本と比べて騎手の技術が発展途上にある釜山では、その影響はさらに大きいものとなっているようだ。

 日本国内のみならず、マカオや韓国など海外まで視野に入れ、まさに、さすらいながらの騎乗を続け、いつの間にか7年目。繰り返しになるが、その年齢も考えると驚異的なことといえる。

 内田騎手は宇都宮競馬が廃止となった04年度にNARグランプリの特別賞を受賞しているが、いずれあらためてその功績を称える何かがあっていいのではないか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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