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オルフェーヴルの海外挑戦に期待

  • 2011年10月28日(金) 12時00分
 最終コーナーをまくって早めに先頭に立ち、そのまま力で押し切る。菊花賞でオルフェーヴルは、これぞ真のステイヤーという勝ち方をした。優勝タイムはレコードにコンマ1秒差の3分02秒8。この早い流れを乗り切って、後続の脚を封じこんだ。堂々たる三冠馬である。

 父のステイゴールドが勝ち上がったのは、3歳の5月半ばのこと。皐月賞もダービーも出走できなかった。菊花賞はかろうじて出走できたが、8着に敗れている。

 母の父メジロマックイーンは古き良き時代のステイヤー血統だ。しかし、今となっては「時代遅れのステイヤー血統」という評価になっている。その父ステイゴールド×母の父メジロマックイーンで生まれた仔が、三冠を達成するのだから血統は面白い。

 今年の3歳世代は、三冠馬ディープインパクトの初年度産駒にあたり、エース級の繁殖牝馬の多くがこのサンデーの最高傑作に集まった。そのぶん他の種牡馬はかなりワリを食っている。

 確かにディープインパクトは期待に応えて2歳リーディングサイヤーとなり、クラシックに向けてのステップレース、トライアルレースに大量の産駒が出走することとなった。スポットライトを浴びるのも、つねにディープインパクト産駒だった。その中からマルセリーナが桜花賞を勝ち、リアルインパクトが安田記念を勝っている。

 けれども、牡馬クラシックを勝ったのはすべてオルフェーヴルだった。同じサンデー系であることには変わりないが、ディープインパクトの牡馬が「誰もがうらやむ世界最高レベルの血筋を持つおぼっちゃん」とすれば、オルフェーヴルは「日本の田舎のあか抜けしないおぼっちゃん」でしかない。

 しかし三冠レースの内容は、欧州の馬場に向くことを暗示するものだった。事実、父のステイゴールドはドバイ、香港の大レースを勝った馬だし、先に出したナカヤマフェスタは、昨年の凱旋門賞で2着と大健闘している。来年のオルフェーヴルには、世界に大きく羽ばたいてもらいたい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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