最終コーナーをまくって早めに先頭に立ち、そのまま力で押し切る。菊花賞でオルフェーヴルは、これぞ真のステイヤーという勝ち方をした。優勝タイムはレコードにコンマ1秒差の3分02秒8。この早い流れを乗り切って、後続の脚を封じこんだ。堂々たる三冠馬である。
父のステイゴールドが勝ち上がったのは、3歳の5月半ばのこと。皐月賞もダービーも出走できなかった。菊花賞はかろうじて出走できたが、8着に敗れている。
母の父メジロマックイーンは古き良き時代のステイヤー血統だ。しかし、今となっては「時代遅れのステイヤー血統」という評価になっている。その父ステイゴールド×母の父メジロマックイーンで生まれた仔が、三冠を達成するのだから血統は面白い。
今年の3歳世代は、三冠馬ディープインパクトの初年度産駒にあたり、エース級の繁殖牝馬の多くがこのサンデーの最高傑作に集まった。そのぶん他の種牡馬はかなりワリを食っている。
確かにディープインパクトは期待に応えて2歳リーディングサイヤーとなり、クラシックに向けてのステップレース、トライアルレースに大量の産駒が出走することとなった。スポットライトを浴びるのも、つねにディープインパクト産駒だった。その中からマルセリーナが桜花賞を勝ち、リアルインパクトが安田記念を勝っている。
けれども、牡馬クラシックを勝ったのはすべてオルフェーヴルだった。同じサンデー系であることには変わりないが、ディープインパクトの牡馬が「誰もがうらやむ世界最高レベルの血筋を持つおぼっちゃん」とすれば、オルフェーヴルは「日本の田舎のあか抜けしないおぼっちゃん」でしかない。
しかし三冠レースの内容は、欧州の馬場に向くことを暗示するものだった。事実、父のステイゴールドはドバイ、香港の大レースを勝った馬だし、先に出したナカヤマフェスタは、昨年の凱旋門賞で2着と大健闘している。来年のオルフェーヴルには、世界に大きく羽ばたいてもらいたい。