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天皇賞・秋で感じたこと

  • 2011年11月04日(金) 12時00分
 秋の天皇賞は、終わってみれば外人ジョッキーのワンツーだった。しかも、名牝ウオッカが樹立した従来のレコードを、1秒1も更新するおまけ付きである。

 乗った外人ジョッキーはピンナ、ベリー、ルメール、メンディザバルの4人。このたった4つの組み合わせで、馬連7020円の馬券が取れるのだからおいしい。しかし、そう思うのは毎度のことながら、学習能力のない人間の悲しさで、レースが終わった後である。

 生産馬の血統レベルが上がり、上位を形成する馬の能力が紙一重になってきた。そのぶん後天的な要素、つまり生産牧場、育成牧場、厩舎人、騎手の能力が、馬の運命を決める傾向がより強くなった。

 その点、社台グループの良血馬は優秀なスタッフが育て、一流の施設で鍛錬され、間違いなく一流の厩舎に入っていく。外人ジョッキーもかなり自由に選ぶことができる。そうした一つひとつの積み重ねで、とんでもない格差社会が出来上がっている。

 秋の天皇賞の結果を見ても、8着までを社台ファーム、ノーザンファーム、白老ファーム、いわゆる社台グループの生産馬が独占。全出走馬18頭のうち、社台グループ以外の生産馬は6頭いたが、それらは枕を並べて下位に討ち死にとなった。

 これが、近年のGIレースの現実である。身内の運動会をやっているようなもので、こうなると合法的な範囲内で、やりたい放題のことができる。勝たせたい馬に理想的な展開をつくるのも簡単だ。騎手や調教師だって、社台グループは大のお得意さんだから、潰しにいくような無茶なことはしない。

 しかし断わっておくが、これは八百長ではない。あくまでも「合法的なさじ加減」である。生産牧場がどこであろうと関係ない、と考える人は多いかもしれない。だが、身内の運動会化は、こうした合法的でありながら実は危ない部分もはらんでいる。公正競馬のためにも、他の牧場にもう少し頑張ってもらわないと困る。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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