フォーティナイナーは現在、世界的にサイヤー・オブ・サイヤーズ(種牡馬群の父)の地位を築き上げ、北米や中南米で成功種牡馬が相次いでいる。面白いのはその多くが、競走馬としてはGII、GIII級か、もしくはそれ以下であった点だ。
たとえば、アメリカで父系を発展させたディストーテッドヒューモア。GIIしか勝てなかったが、種牡馬となって初産駒を送り出すや、いきなりファニーサイドが2003年の米二冠馬(ケンタッキーダービー、プリークネスS)となった。
その後も順調に活躍馬を送り出し、2010年はドロッセルマイヤーがベルモントSを制覇。さらに今秋はBCクラシックを制して、全米の頂点に立った。
社台グループが導入したフォーティナイナー産駒のエンドスウィープも、米GIIIしか勝てなかった馬だ。しかし、アドマイヤムーン(ジャパンC)、スイープトウショウ(宝塚記念)らを出す大成功を収めた。
その意外性を秘めた遺伝力は、次世代にも及んでいる。エンドスウィープ産駒のプリサイスエンドは、米GIIIを勝ったのみで、配合牝馬にも恵まれていないが、なかなかの仔出しだ。
またアドマイヤムーンは初産駒を今夏の2歳戦に送り出すと、ファインチョイスが函館2歳Sを勝つ好スタートを切った。さらに11月には、レオアクティブが京王杯2歳Sを制し、2頭目の重賞勝ち馬となった。
同じ11月の武蔵野Sを勝ったナムラタイタンも、父はエンドスウィープ産駒のサウスヴィグラスだ。GI勝ちはJBCスプリントのみで、この手のダート種牡馬は昔なら失敗に終わることが多かったが、これで早くもラブミーチャン、トーホウドルチェに次ぐ3頭目の重賞勝ち馬である。
サンデー系の猛威に隠れて目立たないが、フォーティナイナー系の遺伝力の確かさが、これらの事実を通してくっきりと浮かび上がってくる。
阪神JFは、性懲りもなくゼンノロブロイ産駒が気になって仕方がない。しかし、このフォーティナイナー系のしたたかな遺伝力に敬意を表して、ファインチョイスから買うことにしよう。