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荒尾最終日を前に

  • 2011年12月16日(金) 18時00分
 この原稿が公開される12月16日の夕方には、荒尾競馬のラスト2の開催も終了していて、残すは23日の最終日のみとなっているはずだ。

 その最終日は荒尾競馬場に足を運ぶ予定だが、さて、どういう気持で最終日を迎えたらいいのだろうと思いはじめている。

 近年では、2001年の中津から05年の宇都宮まで、立て続けにいくつかの地方競馬が廃止された。そのうち、予定されていた最後の3カ月の開催が開催不能となって突然終了してしまった中津と、最終日が大雪のため中止になってしまった新潟以外の競馬場は、最終日の開催に立ち会ってきた。

 どの競馬場でも決まったように、関係者から「普段からこれだけお客さんが来てくれれば廃止されずにすんだのに」という声が聞かれたのは、そのときどきで印象に残っている。

 また、管理者である市長や県知事の廃止に際しての挨拶にはヤジや怒声が飛ぶ。たしかに行政にも責任がないではないが、競馬の不振はバブル崩壊以降、何年にも渡って積み重ねられてきたものだけに、現職にそうした罵声を浴びせるというのは、見ていてもあまり気持ちのいいものではない。

 そして生活の場を失くしてしまうはずの競馬関係者が、来場してくれたファンに対して目一杯感謝の気持ちを伝えてくれることには心が痛む。たとえば上山競馬場の最終日には、最終レース後に騎手全員が入場門のところに整列し、最後のファンが帰るまで見送ってくれた。むしろそうした感謝の気持ちは、関係者以上に、主催者が示すべきではないかとも思うが。

 荒尾競馬では16日の開催でも、荒尾で活躍した名馬の写真を使った来年のカレンダーや、馬場の砂を詰めた小瓶などが抽選で配布されたようだが、最終日には、厩務員会によって製作された馬のたてがみのストラップや金銀の蹄鉄が販売されるらしい。

 こうしたことは、荒尾競馬の公式サイトよりも、熊本日日新聞の記事がいち早く伝えてくれている。

 そうした一連の記事を書いているのは、熊本日日新聞の小野由起子記者で、廃止の具体的な話が持ち上がって以降、厩舎関係者の目線に立った記事を幾度にも渡って伝えてくれていた。記事は熊本日日新聞のウェブサイトで「荒尾競馬」で検索すると今でも読めるので(一部過去のものは有料)、ぜひとも読んでほしい。

 競馬場の廃止に立ち会うとき、自分はいったい競馬に対して何ができただろうと思うのだが、関係者の思いを少しでも多く受け止められるように、荒尾競馬83年の歴史の最終レースを見届けようと思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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