シンザン記念をジェンティルドンナが勝って、ディープインパクト産駒の重賞ウイナーは10頭目になった。生産牧場の内訳は、6頭がノーザンファーム、2頭が社台ファームとなっている。つまり、社台グループの生産馬がほぼ独占した状態だ。
社台グループは確かにディープインパクトを多く付けている。だが、サンデーの成功種牡馬は他にネオユニヴァース、マンハッタンカフェ、ゼンノロブロイ、ダイワメジャーなど数多くいる。だから、エース級の繁殖牝馬をすべてディープインパクトに用意しているわけではない。
それなのに勝つのは、社台グループの生産馬ばかりなのだ。この現象は父のサンデーにも見られたことだった。種牡馬として勲章となる牡馬クラシックで、サンデーは13頭の優勝馬を送り出したが、このうち9頭が社台ファーム、2頭がノーザンファームである。日高の生産牧場は残りの2頭にすぎない。
社台グループの繁殖牝馬を、かりにAランク、Bランク、Cランクの3段階に分けたとしよう。Aランクは誰もが認める名繁殖牝馬、名競走牝馬の集団だ。しかし、社台グループの繁殖牝馬は、Cランクといえども重賞勝ち馬どころか、大物を出す可能性までも秘めている。事実、三冠馬オルフェーヴルの母系は、ドリームジャーニーが出るまではCランクの繁殖血統だった。
むろん日高の生産者も、牧場で最高の繁殖牝馬をディープインパクトに用意する。しかし、残念ながらその質は、社台グループにおけるCランクの繁殖牝馬にも及ばない。その圧倒的な質の差が、社台グループ独走の要因になっている。
だが、良質の繁殖牝馬は、そう簡単に手に入るものではない。改良するにしても、実を結ぶのは最短でも10年はかかる。20年も30年も先というのはざらだ。配合種牡馬も一線級ばかりを付けるには、経済的に限度がある。格差の連鎖はまだまだ続くことだろう。