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重要な意味を持つオルフェーヴルの凱旋門賞挑戦

  • 2012年01月27日(金) 12時00分
 1月23日、JRA賞の授賞式に出かけた。前年度に活躍した人馬を、都内のホテル会場で表彰するものだ。馬の表彰部門は、年度代表馬を筆頭に10部門がある。

 近年、この表彰式では異様な光景が繰り広げられる。どの部門も同じ社台グループの顔ぶれが、入れ替わり立ち替わり壇上にのぼるだけなのだ。まるで再生映像を繰り返し見ているような、そんな光景が延々と続く。

 今年の授賞式も、社台グループが芝のタイトル(8部門)をすべて独占。他の牧場が獲得したのは、最優秀ダートホースと最優秀障害馬のみだった。近年の生産界の格差を、これほど象徴するものはない。

 といっても、社台グループが悪いことは一つもしていない。日々、たゆまぬ研究と努力を積み重ね、ホースマンとして当たり前のことをしてきたまでのことである。

 常に改革の先駆者であり、生産技術、経営努力、販売努力などすべてにおいて、他の中小の牧場が見習うべきことをやってきた。その違いが、これだけの格差となって表れたと言っていい。

 しかし、だからこそ事態は深刻と言える。この格差の溝を埋めるのは、もはや不可能に近い。日高の生産者の淘汰にますます拍車がかかるだろう。だが、社台グループの経営基盤を支える社台スタリオンステーションにとって、最大のお客さんはこの日高の生産者なのである。

 つまり社台グループは、自分たちが肥大化すればするほど、最大のお客さんを失うジレンマを抱えることになる。日本の限られた小さなパイのなかでライバルをせん滅しても、結局は自分の足を食うだけなのだ。

 現状を打破するには、自動車業界のトヨタやホンダがそうであるように、販路や工場を海外にシフトするしかない。もしくは海外から種付けやせりに、積極的にやって来る状況をつくり出すしかない。

 オルフェーヴルの凱旋門賞挑戦は、今後の方向性を占うにおいても、重要な意味を持つことになるだろう。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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