1月23日、JRA賞の授賞式に出かけた。前年度に活躍した人馬を、都内のホテル会場で表彰するものだ。馬の表彰部門は、年度代表馬を筆頭に10部門がある。
近年、この表彰式では異様な光景が繰り広げられる。どの部門も同じ社台グループの顔ぶれが、入れ替わり立ち替わり壇上にのぼるだけなのだ。まるで再生映像を繰り返し見ているような、そんな光景が延々と続く。
今年の授賞式も、社台グループが芝のタイトル(8部門)をすべて独占。他の牧場が獲得したのは、最優秀ダートホースと最優秀障害馬のみだった。近年の生産界の格差を、これほど象徴するものはない。
といっても、社台グループが悪いことは一つもしていない。日々、たゆまぬ研究と努力を積み重ね、ホースマンとして当たり前のことをしてきたまでのことである。
常に改革の先駆者であり、生産技術、経営努力、販売努力などすべてにおいて、他の中小の牧場が見習うべきことをやってきた。その違いが、これだけの格差となって表れたと言っていい。
しかし、だからこそ事態は深刻と言える。この格差の溝を埋めるのは、もはや不可能に近い。日高の生産者の淘汰にますます拍車がかかるだろう。だが、社台グループの経営基盤を支える社台スタリオンステーションにとって、最大のお客さんはこの日高の生産者なのである。
つまり社台グループは、自分たちが肥大化すればするほど、最大のお客さんを失うジレンマを抱えることになる。日本の限られた小さなパイのなかでライバルをせん滅しても、結局は自分の足を食うだけなのだ。
現状を打破するには、自動車業界のトヨタやホンダがそうであるように、販路や工場を海外にシフトするしかない。もしくは海外から種付けやせりに、積極的にやって来る状況をつくり出すしかない。
オルフェーヴルの凱旋門賞挑戦は、今後の方向性を占うにおいても、重要な意味を持つことになるだろう。