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配当率の引き下げ

  • 2012年02月03日(金) 18時00分
 競馬だけでなく他の公営競技も含め、配当率を引き下げる(=控除率を引き上げる)ための法改正が行われるらしい、ということが話題になっている。

 国や地方自治体が配当率を一律何%下げなさいという法改正なら問題だが、配当率に一定の幅をもたせて、その中で主催者が自由に配当率を設定できるようになるなら、それはアリだと思う。

 思うに、一部新聞などの記事の書き方がよくないように思う。

 「現在の年間の売上げが◯◯◯億円で、配当率を◯%下げれば年間で◯億円が主催者の増収になる」という単純な計算はどうなのか。あるお店で「100円の商品を10円値上げすれば、売上げも1割上がる」と言っているようなもので、そんな単純な計算にならないことは、中学生や高校生でもわかるだろう。

 以前のぼくは、配当率を少しでも下げれば、それはサービスの低下であり、即、客離れにつながると考えていた。しかし今はちょっと違う。いきなり5%や10%ならともかく、1%や2%程度の引き下げならファンが逃げてしまうことはそれほどないのではないかと思うようになってきた。

 たとえば、まったく同じ商品を別のお店で異なる値段で売っていれば、1円でも安いほうが売れるだろう。しかし競馬は、たとえ同じ競馬場で行われているレースでも、1レース1レースがまったくの別物。自分が好きで通っている(馬券を買っている)競馬場があれば、配当率がちょっとくらい下がったからといってすべてのファンが別の競馬場に逃げてしまうことはないはず。仮に配当率が少しばかり低かったとしても、当たると自信のあるレースや、興味のあるレースの馬券を買うのではないだろうか。

 配当率を下げることばかりを強調せずに、むしろ主催者の裁量で自由に設定できるようになることに注目すべきだろう。

 そして法改正をするのなら、配当率を50〜90%くらいに幅を持たせることはできないだろうか。諸外国でも行われているように、3連単など高配当が出やすい馬券は配当率を低く、単勝や複勝のように当たりやすい(=配当が低い)馬券は逆に配当率を上げるなど、馬券の種類によっても配当率を変えられるようにすれば、ファンにとっての印象も悪くはない。JRAではすでに行われているように、レースによって配当率を変え、ボーナスレースのようなものを設定するのもひとつの方法だろう。

 そうした中でバランスをとりながら、主催者の収入が増えるように配当率を決められるようにすればいいと思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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