1970年代のアメリカは、歴史的名馬が続々と誕生した。この「輝かしい名馬の時代」をつくり出したのは、ボールドルーラーだったと言っていいだろう。
晩年の傑作セクレタリアトが、ベルモントSを31馬身の大差勝ちで米三冠馬に輝いたのは、1973年のこと。その4年後には、ボールドルーラーの曾孫になるシアトルスルーが、米国史上初の無敗の米三冠馬に輝いた。
セクレタリアトは後継役を果たせなかったが、シアトルスルーは北米リーディングサイアーとなる大成功を収めた。後継のエーピーインディがその父系をつないで、今日に至っている。
1990年の米キーンランドセールに出場したエーピーインディは、鶴巻智徳氏に290万ドル(当時4億3500万円)で落札された。日本に輸入されることなくアメリカで走り、3歳時にBCクラシック、ベルモントSを勝って米年度代表馬に選ばれた。
エーピーインディは種牡馬としても大成功を収め、2003年と2006年に父子2代の北米リーディングサイヤーに輝いた。その後継種牡馬たちも成功が相次ぎ、2戦1勝の下級競走馬でしかなかったマリブムーンが、2010年の北米リーディングサイヤーとなる繁栄ぶりを見せている。
ノーザンダンサー系、ミスタープロスペクター系の猛威に遭いながらも、シアトルスルー、エーピーインディ、マリブムーンと、父系3代にわたる北米リーディングサイヤーの系譜をつくり上げたのである。
エーピーインディの後継種牡馬はこの他にも、GIIしか勝てなったプルピットに始まり、マインシャフト、バーナーディニ…など成功が相次いでいる。またプルピットの後継種牡馬も、エッセンスオブドバイ、スカイメサ、タピットらが続々と成功している。先週のフェブラリーSを勝ったテスタマッタの父が、このタピットである。
サンデー系の牝馬が急増している今日。将来、これらエーピーインディ系の中から、大物種牡馬が誕生することもあるだろう。むろんテスタマッタも、フェブラリーSを勝利して、その候補となる資格を得た。