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アグネスタキオンの逆襲

  • 2012年03月23日(金) 12時00分
 阪神大賞典のオルフェーヴルには驚いた。勝負時に競走をやめ、先頭から最後方まで下がって故障かと思いきや、離れた外ラチ沿いから再び猛ダッシュ。短距離戦なみの加速で先頭集団に追いつくと、直線も長い脚を使って、勝ったギュスターヴクライに最後まで食らいついた。

 長い競馬歴のなかで、下級レースならいざ知らず、重賞レースでこんな馬を見たのは初めてだ。頭の構造が尋常ではないのかもしれないが、競走能力も尋常ではないことが、これではっきりした。

 翌朝、テレビのワイドショーはこの話題で持ち切り。スポーツ新聞も一面で大きく取り上げた。三冠を獲ったときよりも、世間の注目を集めたのではないだろうか。

 単勝を買った方には申し訳ないが、これだけの話題を提供してくれた馬は、久々のような気がする。この先もヒヤヒヤ、ドキドキさせて、今の優等生的なマンネリ競馬に活を入れてほしい。

 ディープインパクト産駒で注目の集まるクラシック戦線は、若葉Sをワールドエースが快勝。スプリングSもディープブリランテが2着して、何とか面目を保った。

 だが、ディープインパクトには敵が多いことも、フラワーC、スプリングSで浮き彫りにされた。勝ったオメガハートランド、グランデッツァは、ともにアグネスタキオン産駒である。

 ディープインパクトの種牡馬入りによって、エース級の繁殖牝馬を横取りされてしまったアグネスタキオン。その鬱憤を晴らすべく、虎視眈々とクラシックを狙っている感じがする。

 今春のクラシックは牡馬も牝馬も、ディープインパクト産駒優位の状況は変わらないだろう。しかし、アグネスタキオンだってダイワスカーレット(桜花賞)、ディープスカイ(ダービー)、キャプテントゥーレ(皐月賞)らを出している。

 本番でディープインパクトの足元をすくうとしたら、案外、このアグネスタキオンあたりかもしれない。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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