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オールドファンには懐かしいラダンスーズ系

  • 2012年03月30日(金) 12時00分
 日経賞を勝ったネコパンチ。その母系は、オールドファンにとっては懐かしいラダンスーズ系である。今から30年前、1982年の桜花賞を勝ったリーゼングロスが、このラダンスーズ系だった。

 続くサンスポ賞4歳牝馬特別も勝ち、本番のオークスは楽勝ムードが漂っていた。ところが、発走直前に放馬するアクシデント。この時点でかなりのスタミナを消耗することになった。万事休すかと思われたが、2着に食い込む底力を見せた。

 このとき勝ったのがシャダイアイバー。売出し中のノーザンテーストが、初のクラシック馬を誕生させることとなった。リーゼングロスの父アローエクスプレスは、テスコボーイと並ぶナスルーラ系の旗手。パーソロンを代表としたトウルビヨン系と、この時代の日本で2大勢力を築いていた。

 ために欧米で猛威をふるうノーザンダンサー系の導入が、10年も遅れることになった。だが、このノーザンテーストの成功で潮目が変わり、空前のノーザンダンサー系ブームが日本に巻き起こることとなる。それを暗示したレースが、このオークスでもあった。

 そんな中、ラダンスーズ系は以後も勢力を伸ばし、タケノベルベット(エリザベス女王杯)、オースミダイナー(北海道スプリントC)といった活躍馬を続々と送り出していった。

 だが、サンデーを擁する社台グループの隆盛と、対する日高の低迷。それを象徴するかのように、近年のラダンスーズ系は衰退の一途をたどっていた。

 ネコパンチの母系3代ファミリーにしても、地方競馬でさえまともに勝てないスカスカの状態。父はサンデー系とはいえ、マイナー種牡馬のニューイングランドときている。

 この配合でよくもあ、別定のGIIレースを勝ったものだ。母の父ダンシングブレーヴの力なのか、それとも父系に流れるサンデーの力なのか。ともあれ、オールドファンとしては、かつての名牝系の復活に拍手を送りたい。

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血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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