スマートフォン版へ

残念なハナズゴールの回避

  • 2012年04月06日(金) 12時00分
 ハナズゴールが勝ったチューリップ賞。タイムは、その一つ前に行われた古馬の準オープン、武庫川Sとほぼ同タイムだった。それでいてラストの1ハロンは、武庫川Sで最速のデンコウジュピターより、0秒7も速い。

 この内容から判断する限り、ジョワドヴィーヴル、ジェンティルドンナら有力馬の凡走による、棚からぼたもち的な勝利ではなかったように思う。

 問題は、血統だった。出走メンバーでは最低ランクに位置し、曾祖母までの3代ファミリーは、あきれるほどスカスカの状態。今どき、地方競馬でもこれほど貧弱な母系は、なかなかお目にかかれない。

 母の父シャンハイにしても、仏2000ギニー(皐月賞に相当)の優勝馬だが、中央競馬の芝で重賞を勝った産駒は皆無。ブルードメアサイヤーとしても、地方競馬のかなりマイナーな重賞の勝ち馬がほとんどである。

 一方、父のオレハマッテルゼもサンデーの後継種牡馬ではあるが、GI勝ちは高松宮記念だけ。ディープインパクト以下、他の大物後継種牡馬に比べると、配合牝馬に月とスッポンの差がある。

 だが、革命的な種牡馬の血がサラブレッド全体に行き渡るころになると、メジャー配合の間隙を縫って、この手のマイナー配合が時に浮上してくる。

 日本もそんな時代を、そろそろ迎えようとしているのかもしれない。桜花賞はハナズゴールから買ってみようと思う…と書いたところで、桜花賞回避の知らせを受けた。

 残念である。しかし出ない馬のことを、これ以上書いてもしようがない。となれば、中心はやはりディープインパクトの産駒たちだろうか。去年に比べて今年の2世代目は、明らかに能力が違う。2世代に大変身するのは、サンデー系のお家芸でもある。

 ただアグネスタキオンも、今年の3歳は意外に粒が揃っている。ディープインパクトにエース級の繁殖牝馬をかなり横取りされた。その鬱憤を晴らすシーンが、あっても不思議はない。

吉沢譲治氏新版
吉沢譲治氏の『競馬の血統学』新版が4/6に発売!
綿密な取材と分析に基づく大胆な推論で話題を呼んだ「JRA馬事文化賞」受賞作が表記や内容の一部を改め新版で登場!

 イタリアの至宝ネアルコ、フランスの雄トウルビヨン、カナダが送った革命の使者ノーザンダンサーなど8頭の種牡馬から読み解く名馬誕生の秘密に迫ります。2012年クラシックシーズンを前に、名作のリニューアルを是非お楽しみください。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング