デビュー前、栗東に在厩している時から「この馬は走るよ」と須貝尚介調教師が話していたゴールドシップ。今回はあらためて、ゴールドシップとの出会い、成長、そしてクラシック第一弾「皐月賞」へ向けての思いを語ってもらった。
坂路を駆けるゴールドシップ
―非常に抽象的な質問になりますが、ゴールドシップってどんな馬なんですか?
お母さんのポイントフラッグに騎乗していたこともあって、産まれた時から思い入れの強い馬でした。産まれてからずっと牧場に様子を見に行っていたこともあって、1歳頃から僕のことを覚えていますよ。声を掛けると近寄ってくるんです。そうやって接していると、馬らしくないというか…、馬の気性や性格を説明する上で「子供っぽい」とか「大人っぽい」という言葉を使うことがありますが、この馬は「人間っぽい」んですよ。気に入らないことがあれば、やることはきついですし、感情表現が激しいんです。でもそんなところが前に馬がいると追いかける「闘争心」に繋がっているんだと思います。
―デビューするまでの経緯をあらためて教えていただけますか?
去年の3月に福島にある天栄ホースパーク(現ノーザンF天栄)に移動したんですが、震災があって、10日も経たないうちに浦河に戻したんです。それから2週間ほどして、また小松温泉牧場へ移動して、それから栗東へ入厩。最後はレースを使った函館へ入厩するという経緯だったんですが、これだけいろんなところに輸送された経験が活きているんでしょう、今でもどこへ輸送しても体が減ることはありませんし、本当に精神的に強いですね。
―馬体重に大きな変動がないのが特徴のひとつだと思いますが?
馬体重はデビューしてから4キロほど増えているんですが、デビュー前より体自体は締まっているんですよ。脂肪が筋肉に変わって重さになっているんだと思います。数字には大きな変化はありませんが、中身は全然違いますね。なんといっても脚元が丈夫、これも大きな特徴です。不安なところがないから、強い調教もしっかりとできますから。
「自然と結果は出ると思う」
―中山コースは初めてになりますが?
入れ込むようなところは全くなく、いつも落ち着いて周りを見ることができる、いい意味で遊びがあるんですよ。だから初めての場所でも全く問題ありません。どんな競馬場でも、どんな馬場でも、どんな枠でも大丈夫。だからジョッキーは馬を信頼して全力を出して欲しいですね。この馬が楽しめる競馬をしてくれれば、自然と結果は出ると思っているんですよ。
ここまでの話は1週前追い切り前日、4月3日に聞いた内容だが、ゴールドシップを語る師の瞳が本当に優しく、スポーツ界と同じ「トレーナーとアスリート」という関係が成り立っているように思えた。
また坂路でのキャンターを終えた後の運動中、師が各馬の様子を見ていると、ゴールドシップの表情も非常に穏やかに見え、師が「人間っぽい」と語った意味が少し理解できたような気がした。
あとは1週前追い切りの内容を加えて、本原稿をまとめるつもりだったので、翌日の予定を伺うと「坂路でジャスタウェイと併せる予定です」と教えてもらっていた。
―1週前追い切りに芝コースを選んだ理由を教えていただけますか?
前日の暴風雨で坂路の馬場が相当悪くなっていました。筋肉への負担をかけたくなかったので、前日に予定していた坂路ではなく、芝コースでの追い切りを選択しました。2頭ともトラックコースに出すのは久しぶりでしたし、程よくクッションの利く雨上がりの馬場で中山コースに似た感触を確かめることもできるんじゃないかと思ったんです。
―ゴールドシップには内田博幸騎手、ジャスタウェイには福永祐一騎手が跨っての追い切りでしたが、両騎手にどのような指示をされたんですか?
どちらも背中の感じを味わってほしかったので、道中無理しない程度に進めて、終いの感触を確かめて、ゴールでは2頭が同入するような形でフィニッシュしてほしいと伝えていました。さすがトップジョッキーですね、指示通りに騎乗してくれましたし、2人にもいいコメントをもらいました。これがうまく出てくれればいいんですけどね。