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アグネスタキオンの意地

  • 2012年04月13日(金) 12時00分
 サンデーは欧州のステイヤー牝系や、ステイヤー系の種牡馬と相性が良かった。初期のダンスインザダーク、スペシャルウィーク、中期以降のディープインパクト、マンハッタンカフェ、ネオユニヴァースといった大物たちは、多くがこの配合で生まれている。

 サンデー自身は、早熟の短中距離血統。典型的なアメリカ血脈であり、成長力やスタミナは、それほど持ち合わせてはいなかった。足りない成長力とスタミナは、配合牝馬から巧みに引き出すことで、数多くの万能の一流馬を世に出していったのである。

 これとは対照的に、ライトなアメリカ血脈が配合相手では、成長力やスタミナに問題がある産駒が目立った。未曾有の大成功は、決して似た者同士の配合で成し得たものではない。

 後継種牡馬たちもこの父の特長、すなわち欧州のステイヤー牝系や、ステイヤーの種牡馬との相性の良さを、多くが受け継いでいる。ディープインパクトがラッキーだったのは、サンデー晩年の傑作だったため、先の後継種牡馬たちの成功例、失敗例のサンプルが、すでに豊富にあったことだろう。

 だから、関係者が配合のコツをつかんでいた。ディープインパクトが種牡馬入りするのと時を同じくして、ドイツのステイヤー牝馬を積極的に購入していることでも、それがよくわかる。

 ワールドエースの母系が、その一つだ。皐月賞に出走する他のディープインパクト産駒たちも、多くが母系に欧州牝系を従えていることで共通する。

 ディープインパクト産駒のクラシック馬第1号となったマルセリーナ。この馬の母マルバイユも、母系は欧州血脈である。アグネスタキオンはこのマルバイユを相手にする幸運を得て、グランデッツァを送り出した。

「俺だって、配合牝馬に恵まれさえすれば、ディープインパクトなんかに負けけない」。そんなアグネスタキオンの意地みたいなものが伝わってくる。

 皐月賞は、このグランデッツァと先のワールドエースを本線に、トリップ以下の人気薄を絡めてみたいと思う。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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