サンデーは欧州のステイヤー牝系や、ステイヤー系の種牡馬と相性が良かった。初期のダンスインザダーク、スペシャルウィーク、中期以降のディープインパクト、マンハッタンカフェ、ネオユニヴァースといった大物たちは、多くがこの配合で生まれている。
サンデー自身は、早熟の短中距離血統。典型的なアメリカ血脈であり、成長力やスタミナは、それほど持ち合わせてはいなかった。足りない成長力とスタミナは、配合牝馬から巧みに引き出すことで、数多くの万能の一流馬を世に出していったのである。
これとは対照的に、ライトなアメリカ血脈が配合相手では、成長力やスタミナに問題がある産駒が目立った。未曾有の大成功は、決して似た者同士の配合で成し得たものではない。
後継種牡馬たちもこの父の特長、すなわち欧州のステイヤー牝系や、ステイヤーの種牡馬との相性の良さを、多くが受け継いでいる。ディープインパクトがラッキーだったのは、サンデー晩年の傑作だったため、先の後継種牡馬たちの成功例、失敗例のサンプルが、すでに豊富にあったことだろう。
だから、関係者が配合のコツをつかんでいた。ディープインパクトが種牡馬入りするのと時を同じくして、ドイツのステイヤー牝馬を積極的に購入していることでも、それがよくわかる。
ワールドエースの母系が、その一つだ。皐月賞に出走する他のディープインパクト産駒たちも、多くが母系に欧州牝系を従えていることで共通する。
ディープインパクト産駒のクラシック馬第1号となったマルセリーナ。この馬の母マルバイユも、母系は欧州血脈である。アグネスタキオンはこのマルバイユを相手にする幸運を得て、グランデッツァを送り出した。
「俺だって、配合牝馬に恵まれさえすれば、ディープインパクトなんかに負けけない」。そんなアグネスタキオンの意地みたいなものが伝わってくる。
皐月賞は、このグランデッツァと先のワールドエースを本線に、トリップ以下の人気薄を絡めてみたいと思う。