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デビュー時期とローテーション

  • 2012年04月27日(金) 12時00分
 今年から2歳新馬戦の開幕が早くなったとかで、10日ほど前、早くも新種牡馬の原稿の依頼が舞い込んできた。東京開催にもその2歳新馬戦が組み込まれているという。

 開催日程をのぞいてみると、確かにダービーの翌週、6月2日(土)に芝1400m、6月3日(日)に芝1600mの2歳新馬戦が組み込まれている。東京競馬場で2歳新馬戦開幕というのは、あまり聞いたことがない。JRAのホームページには、こう書いてある。

「2歳馬競走のさらなる充実と、競走馬のより円滑なサイクル形成を図る観点から、夏季競馬を平年より2週繰り上げ、東京優駿(日本ダービー)施行週の翌週から2歳馬競走を編成いたします」

 POGのドラフトは忙しくなるだろう。「迷えるスピルバーグ」を持っていて、日々、やきもきしている当方にとっては、それどころじゃないというのが本音だが、東京競馬場で開幕というのはいい。

 ただ、これはあくまでも興行的な側面からであり、馬にとって吉と出るか凶と出るかは、数年経ってみなければわからない。

 今週の青葉賞。登録馬の多くが良血馬である。ゆえに総じてデビューを遅らせたが、結果的に勝ちあぐみ、ダービーが近づいてあたふたと無理なローテーションを組んだ馬が目立つ。翌週のプリンシパルSにも、計算違いの良血馬が大量に出走してくるだろう。

 これに対して皐月賞を勝ったゴールドシップは、昨年7月9日、函館のデビュー戦を勝った馬だ。続く9月10日のコスモス賞を2連勝し、10月1日の札幌2歳Sで2着。賞金的にこの時点で皐月賞の出走権をほぼ得ていた。これが、その後の無理のないローテーションにつながっている。

 早く仕上がる馬=早熟馬、とは限らない。今週の天皇賞・春に出てくるオルフェーヴルも、デビューは2歳の8月14日だった。

 素質の高い血統馬の多くが、晩秋になってデビューしてくる。しかし、この反する事実は、それが最良の選択とは限らないことを、かなり皮肉っている。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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