春の天皇賞を勝ったビートブラック。父のミスキャストは1998年の生まれで、アグネスタキオン、マンハッタンカフェと同じサンデーの7世代目にあたる。
ミスキャストのデビューは3歳の2月と遅かった。しかし、母のノースフライトはトニービンの初年度産駒で、安田記念とマイルCSを勝った名牝。良血馬らしく、続く2戦目の弥生賞で3着に入り、皐月賞の出走権を得た。
この弥生賞は5着まで、すべてサンデー産駒だった。吹き荒れるサンデー旋風はやむことを知らず、7世代目を迎えてさらに勢いを増していた。
勝ったアグネスタキオンは続く皐月賞を制覇。4着に敗れたマンハッタンカフェもひと夏を越して成長し、菊花賞を制した。ともに種牡馬となって成功し、日本リーディングサイアーに輝いている。
ミスキャストも2戦のキャリアで、皐月賞を6着に健闘。続くダービートライアルのプリンシパルSを制したが、その後は脚部不安などに苦しめられ、ついに重賞を勝てないまま引退となった。
すでにサンデーの後継種牡馬はたぶついており、社台グループ産のステイゴールドでさえ、日高に放出されていた時代である。父がサンデーでもGII、GIII勝ちしかない種牡馬には、なかなかチャンスがめぐってこなかった。
重賞勝ちのないミスキャストは、そのさらに下のランク。種付料は受胎確認後で20万円という安さだった。実際には、これよりもっと安かったと思われるが、ここ数年、配合牝馬は一けた台という人気のなさだった。
ステイゴールド、オレハマッテルゼ、ミスキャスト…。配合牝馬の質、数に恵まれなかったサンデーの後継種牡馬の活躍が、このところ相次いでいる。
革命的な種牡馬の血が、サラブレッド全体に行きわたるころになると、こうした逆転現象が頻繁に起きるようになる。ついにサンデーの血も、そんな時代を迎えた気がする。