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払戻率の引き下げ

  • 2012年05月11日(金) 18時00分
 新聞などの報道によると、払戻率が75%から70%に引き下げられるという。といっても競馬の話ではない。6月9日から川口オートで実施とのこと。

 各公営競技で、払戻率が決められた範囲内で主催者ごとに自由に設定できるようになるということは、以前にこのコラムでも触れたが、その払戻率の範囲が70〜80%(控除率30〜20%)と決められた。そしてそれを全国でおそらく初めて適用するであろう川口オートは、ファンにしてみればもっとも厳しい70%と設定した。

 公営競技ではこれまで、下がり続ける売上減には、賞金の減額や経費の削減などで対応してきたが、払戻率を下げることで対応するのは、戦後ではこれが初めてのこととなるのではないだろうか。

 以前にこの問題をここで取り上げた時にも触れたのだが、やはり賭式の種類によって払戻率を上げたり下げたりして、全体で収入が増えるようにすればいいものを、やはりといおうか、すべての賭式で一律70%にしてしまったことはちょっと残念。これでは消費者(ファン)の立場にしてみれば、(控除率の)一斉値上げという印象が強い。

 これがシステムの都合によるものなのかどうか。とはいえJRAではかなり以前から単・複では特別給付金を約5%上乗せしているし、最近ではボーナスレースとして、払戻率の高いレースを設定しているので、それができないということもないはずだ。

 とにかく川口オートでは、改正された払戻率の下限である70%での開催が6月から始まることになる。昨年度の売上げは214億円余りだったそうで、仮に今年度も同じだけの売上げがあれば、机上の計算では約10億円の増収になる(4、5月は現行の払戻率75%で行われているので、実際にはもっと少ないが)。

 この払戻率引き下げには、おそらくすべての公営競技関係者が注目していることと思うが、もっとも気になるのは、やはりこれが原因で売上げが下がってしまうのかどうか、言い換えればファンが離れてしまうのかどうかということだろう。

 売上げには、景気やそのときどきの社会情勢などさまざまな要因がからんでくるため、たとえ売上げが下がったとしても、そのうち払戻率引き下げによるものがどれだけなのかという判断は困難だと思われるが、実はぼく個人としてはあまり悲観的ではない。多少はそれによって離れてしまうファンもいるかもしれないが、結局はそのギャンブルが好きだからやってるんでしょ、ということだ。

 もちろん払戻率がいきなり50%とかになってしまうというなら話は別だが、実際に払戻率が50%前後の宝くじやサッカーくじ(TOTO)にかなりのファンがいることを考えれば、5%下がったところでという気はする。逆説的にはなるが、JRAで払戻率の高いボーナスレースを設定しても、そのレースが目に見えて売上げが上がっているわけではないらしい、ということもある。

 一部報道によると、オート全6場が車券発売システムの関係で、川口オートに追随する可能性が高いようだが、さて、これによって売上げは多少下がっても収入としては増えるのか、それとも壊滅的に売上げが下がってしまうのか、この1年はちょっと注目したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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