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「距離の壁」が見え隠れするアイムユアーズ

  • 2012年05月18日(金) 12時00分
 アイムユアーズの父ファルブラヴは、4歳時の2002年、中山のジャパンC(2200m)を名手デットーリに導かれて勝った馬である。ただ、それまではイタリアのGIしか勝っておらず、デットーリの腕のみがクローズアップされた感じだった。

 しかし5歳になると、ジャパンCが実力の勝利であったことを証明する。英GIの英インターナショナルS(芝2100m)、エクリプスS(芝2000m)、クイーンエリザベスII世S(芝1600m)、仏GIのイスパーン賞(芝1850m)、香港GIの香港C(芝2000m)の5つもGI勝ちを収めたのだ。

 米芝チャンピオン決定戦のBCターフ(芝2400m)でも3着に好走し、この5歳時の活躍が本物であったことを証明している。ジャパンCの勝利をバネに世界へ羽ばたいた、晩成の中長距離ランナーだった。

 ところが、なぜか産駒は一様にスプリンターやマイラーばかり。産駒が勝った重賞も、この部門に集中している。おまけに仕上がりが早くて、早熟っぽいときている。競走成績と種牡馬成績が、これだけ正反対の種牡馬も珍しい。

 アイムユアーズも2歳の早くにデビューし、1400mのファンタジーS、フィリーズレビューを勝ったが、マイルの阪神JFは2着、桜花賞は3着に敗れた。ファルブラヴ産駒に共通した「距離の壁」が見え隠れする。

 桜花賞も手応えの割には、意外に伸びなかった。つねにトップクラスと戦い、差のない競馬をしてきた馬なのに、人気がないのはそのためだろう。

 だが、曾祖母のダイナカールはオークス馬で、今日、万能の名牝系を築き上げている。そこにサンデー、エルコンドルパサーが入って、アイムユアーズが誕生した。

 エルコンドルパサーはジャパンCを勝ち、凱旋門賞で歴史的2着した名ステイヤーである。サンデーは言わずと知れた名種牡馬で、配合相手のスタミナを引き出すことにも長けている。馬体は少し胴が詰まり気味だが、この母系ならオークスはこなすとみる。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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