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新種牡馬チチカステナンゴ、前評判は高くないが…

  • 2012年06月01日(金) 12時00分
 中央競馬の新馬戦が今週から始まる。そこで注目の新種牡馬を、数回に分けて取り上げてみたい。

 同じ可能性を持った種牡馬でも、社台グループが輸入するのと、日高の生産者グループやJRAが輸入するのとでは、スタート段階で大きな差がつく。

 今日、社台グループの繁殖牝馬と、日高の牧場の繁殖牝馬とでは、質の面で著しい格差が生じているからだ。その点において、社台グループが輸入したチチカステナンゴは、最も優位に立っている。

 サンデー及び、その後継種牡馬を父に持つ牝馬は、多くが名牝系に属する。そこにサンデーの血が入って一段とレベルアップした。これら日本を代表する最高繁殖牝馬群が、非サンデー系のキングカメハメハやクロフネを、成功種牡馬に導いた言ってもいい。

 チチカステナンゴの父系は、トニービンと同じグレイソヴリン系に属する。枝分かれした支流父系は異なるが、トニービンとサンデーの相性の良さを意識して輸入したものだ。

 トニービンはサンデーと抜群の相性を示し、アドマイヤベガ(日本ダービー)、ハーツクライ(有馬記念)ら数多くの活躍馬を出した。その後継種牡馬のジャングルポケットも、やはりサンデー牝馬と相性が良く、トールポピー(オークス)、ジャガーメイル(天皇賞・春)らのGI勝ち馬を出している。

 また、その逆配合、すなわち父サンデー系×母の父トニービン系においても、相性の良さは顕著だ。

 チチカステナンゴは3歳時にフランスのGI、パリ大賞(芝2000m)、リュパン賞(芝2100m)を勝ち、仏ダービーで2着の競走実績を持っている。そのわりに欧州では配合牝馬に恵まれなかったが、2世代目からヴィジオンデタ(仏ダービー)が出て、評価を一気に高めることになった。

 対する日本では、サンデーの血が入った最高の繁殖牝馬群が、初年度からチチカステナンゴに用意されている。今はサンデー系の牝馬が、異系種牡馬に蘇生の息を次々と吹き込む時代である。2歳馬の前評判は決して高くないが、サンデー系の牝馬がこの種牡馬を、おそらく男にするだろう。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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