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きゅうりの撮影不許可

  • 2012年06月01日(金) 18時00分
 さきたま杯は、セイクリムズンが昨年の覇者ナイキマドリードに8馬身差をつけて圧勝。ダートグレード4連勝で、スーニの調子が今ひとつなだけに、この路線にはもはや敵なしという勢いだ。

 で、そのメインレースを前に、いつものように競馬場グルメのネタ集めをしていたときのこと。

 そういえば、天ぷらおにぎりだとか、きゅうりだとか、浦和競馬場に昔からある名物グルメを紹介してなかったなあと思い、おにぎりを食べるほどはお腹がすいていなかったので、この日はきゅうりに照準を定めたのだった。

 串に刺さったきゅうりが1本100円。詳細については、いずれグリーンチャンネルの某地方競馬の番組で紹介するのでそちらをご覧いただくとして、じつはこのきゅうりで、ちょっとイヤな、そしてちょっと怖い思いをしたのだった。

 100円払ってきゅうりを1本もらって1口、カリッと食べたところで、店頭に推定20本ほどのきゅうりが山になっている状態の写真を撮らせてもらおうと、「すいません、きゅうりの写真撮ってもいいですか」と念のため聞いてみた。すると、返ってきた返事は意外なものだった。

「事務所の許可はとったんですか!」と。

 ぼくは一瞬言葉を失い、「あっ、取材なんですけど…」と腕章を見せた。すると、

「だ・か・ら、事務所の許可はとったんですか!」とリピートされた。

 あのね、人の顔を撮ろうというんじゃなくて、ここで売ってるきゅうりを撮るだけなんですけど、と喉元まで出かかった言葉を飲み込み、「じゃあいいです」と引き下がった。ここで言い争ってもプラスになることは何ひとつないし、一応自分の立場も考えたからだ。

 一瞬怯んだのは、「事務所の許可はとったんですか」という言い方が、注意するとか怒るとかいうレベルではなく、まるで脅しのような口調だったからだ。で、それがおじさんとかではなく、おばちゃんなのだった。

 それで思い出したことがあった。ぼくが競馬の取材をはじめたばかりの20年近く前のこと。競馬雑誌の編集者とカメラマンと浦和競馬場の取材に来て、2号スタンドの、今はもうない売店で、そこで売っているものをカメラマンが撮影していたら、やはり脅されるような口調で怒られたことがあった。ああ、あの当時と変わってないんだなあと。

 たしかに取材内容については主催者を通すのがスジかもしれないが、一応写真を撮ってもいいか聞いてるんだから、ダメならダメで今どきもうちょっと言い方があると思うのだが。

 ちょっと腹立たしかった一方で、今でも地方競馬にはそうした昭和的なしきたりというか考えが残っているんだなあと、むしろ妙に感心。今は携帯のカメラやデジカメで競馬場の食べ物などの写真を撮るというファンも多いと思うが、まれにこういうこともあるので、注意しましょうね。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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