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アルデバラン、成長力&底力という点では限界が

  • 2012年06月15日(金) 12時00分
 今年の輸入新種牡馬は全体に小粒。取り上げられるのは、先々週紹介したチチカステナンゴと、今週紹介するアルデバランぐらいなものである。

 ミスタープロスペクター晩年の傑作というのが、アルデバランの売りだ。偉大な種牡馬はどこまでも偉大で、並みの種牡馬ならとっくに引退か死亡している27歳時の種付けで、このアルデバランを出した。

 欧州でデビューしたが、アメリカに転戦してから力をつけ、2003年の5歳時に米GIのサンカルロスH(ダ7ハロン)、メトロポリタンH(ダ8ハロン)、フォアゴーH(ダ7ハロン)を3勝した。この年の米チャンピオンスプリンターに選ばれている。

 競走成績を見る限りでは晩成タイプだが、血統的には仕上がり早である。スプリント、マイルが得意の典型的なミスタープロスペクター系と考えていい。

 初年度産駒は2007年の2歳戦でデビューしたが、北米の動きは芳しくなかった。一方、日本では外国産馬のダノンゴーゴーが活躍。3歳になってファルコンSを勝ち、NHKマイルCで3着に食い込む健闘を見せた。これを見てアメリカ側は日本に向けて、「買わないか」のオファーを発信。即座にJRAが飛びつき、その秋、獲得交渉がまとまった。

 種牡馬は2世代目から変身することがよくある。が、残念ながらアルデバランは該当しない。これまで5世代を出して、仏米のGIII勝ち馬を5頭出した程度で、GII勝ち馬すら出していない。欧州でデビューしたメインシークエンスが、今春、英ダービーで2着に入ったのは朗報だが、売却を後悔させるまでには至っていない。

 産駒の仕上がりは早く、2歳戦から楽しめそうだ。ダートも芝もこなすが、それほど距離の融通性はない。マイル前後が主な活躍の舞台となるだろう。芝はいくらか力のいる馬場が合う。道悪も巧いはずだ。

 ダノンゴーゴーのイメージが、アルデバランの血統的な特徴とみていい。成長力、クラシックの底力という点では、おのずと限界があるかもしれない。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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