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なぜ、オルフェーヴルばかりが強いのか

  • 2012年07月06日(金) 12時00分
 これはサンデーの後継種牡馬の全般に言えることだが、父サンデーよりも海外遠征においては優秀である。

 大物後継種牡馬の多くがスタミナ、パワーに富む海外のステイヤー牝系や、日本古来のステイヤー牝系に配合されて、「力のいる海外仕様」に生まれているからだろう。ネオユニヴァース産駒のヴィクトワールピサがドバイワールドCを勝ったのも、ステイゴールド産駒のナカヤマフェスタが、凱旋門賞で2着となったのも納得がいく。

 オルフェーヴルの母の父メジロマックイーンも、日本が誇る名ステイヤーであり、血統構成を過去にたどれば欧州のステイヤーが凝縮されている。ステイゴールドの母の父ディクタスも、それは同じである。サンデーがステイゴールド、メジロマックイーン両者の成長力とスタミナを絶妙に引き出して、注目の黄金配合をつくり出したと言えるかもしれない。

 それにしてもなぜ、古馬はオルフェーヴルだけが強いのだろう。宝塚記念を見ていて、つくづく他の馬が不甲斐なさを感じた。どうも成長の上積みが足りない。みんな平行線、もしくは下降線だ。今の日本のサラブレッドが、成長力が欠落していることを象徴している。

 スピードの追求に邁進し、この配合を何代も繰り返すと、スタミナと成長力が薄れていく。せっかくの万能の名牝系が、単なる早熟の短距離血統に墜ちてしまう。日本はお望みのスピードは得られたが、その副作用として、伝統の名牝系のスタミナや成長力を殺ぐことになったのだろうか。

 オルフェーヴルの持つスタミナ、持久力、パワー、成長力は、今の日本の芝で走るサラブレッドに最も欠けているものだ。オルフェーヴルだけが強いのも納得がいく。

 父ステイゴールド×母の父メジロマックイーン。この時代遅れの、古くて何となくカビ臭い配合が、実は今のサラブレッドが最も欲しているものなのかもしれない。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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