先週の七夕賞を14番人気で勝ったアスカクリチャンは、父がスターリングローズで、母の父がダイナレター。今時の重賞勝ち馬としては、かなりマイナーな血統だ。父、母の父ともに、中央の重賞勝ち馬が誕生したのは、このアスカクリチャンが初めてになる。
曾祖母のリビーザリブラはアメリカ産で、この牝馬の時代にはノーザンテースト、テスコボーイ、マルゼンスキーといった時の名種牡馬が付けられている。
だが、祖母スワンスキーの代になると、牧場の凋落とともに、配合種牡馬のレベルダウンが激しくなった。それでもシグナスヒーロー(日経賞2着)が出たが、その後、ますますレベルダウンが激しくなり、付けられたのはダイナレター、イタリアンカラーといったマイナー種牡馬だった。
そこに、牧場の苦しい台所事情が見て取れる。しかし、ダイナレターを付けて生まれた牝馬のローレルワルツは、特別戦を含めて中央競馬で3勝して、5000万円近くもの賞金を稼いだ。
ダイナレター産駒で中央のオープンまで行ったのは、マイネルエアメールだけである。これは完全に失敗種牡馬であったことを意味する。しかし、ローレルワルツはそのダイナレター産駒のなかで、3番目に高い賞金を稼ぎ出していた。
この手の牝馬は、父がマイナー種牡馬ということで軽視されがちだが、母となって意外に成功することが多い。低い確率の中から、先祖の優秀な血を受け継いだということなのだろう。
近年、社台グループはそこに目をつけて、この手の一流牝馬を海外から購入し、うまく成功に結びつけている。今春の桜花賞、オークスを勝ったジェンティルドンナの母が、その一例だ。
確かにローレルワルツも、繁殖入りしてからずっと配合種牡馬に恵まれなかったが、四番仔にこのアスカクリチャンを出した。これは将来が楽しみだと思ったが、調べてみると2009年の5月に、13歳の若さですでに死亡していた。
せめてもうワンランク上の種牡馬を付けていれば、もっと上級馬を出すチャンスがあったように思う。残念でならない。