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オルフェーヴル血統構成は凱旋門賞向き

  • 2012年07月20日(金) 12時00分
 オルフェーヴルの凱旋門賞挑戦が、スミヨン騎手で正式に決まった。新聞によると池江泰寿調教師は、「苦渋の決断でした。凱旋門賞に勝つためにはどうすべきか、関係者みんなで協議した結果、スミヨン騎手にお願いすることになりました」

 と、記者会見で話している。池添騎手は口惜しいだろうが、もしスミヨン騎手で負ければ「馬が弱かった」で人は納得する。だが、池添騎手で負ければそうはいかない。騎手のせいとして、批判の集中砲火を浴びることになりかねない。池添騎手の将来のためにも、これでよかったように思う。

 オルフェーヴルの血統構成は凱旋門賞に向いている。ある意味でカビ臭い、今や化石と化したような古いステイヤー血統の凝縮だが、だからこそ欧州の力のいる馬場に向く。

 母の父メジロマックイーンにつながる「メジロ天皇賞馬3代の系譜」は、馬名の字面を見るかぎりでは、垢抜けしないコテコテの内国産血統の印象を受ける。

 だが、初代メジロアサマの母スヰートは、シンボリ牧場の先代、和田共弘氏がアメリカの歴史的名牝系「ラトロワンヌ系」に目をつけ、苦労して手に入れた牝馬だ。この時代においては最先端をゆく、スタミナとパワーに富むファッショナブルな血統だった。

 二代目メジロティターンの母シエリルも、メジロ牧場の先代、北野豊吉氏がフランスのせりで、今の金額なら1億円はしようかという値段で買った名血だ。近親には当時の欧州の名馬、名種牡馬が目白押しだった。

 ステイゴールドの母の父ディクタスも、その父系をたどれば英三冠馬のゲインズボローに行き着く。かつて世界的に一世を風靡したステイヤー血脈である。

 こうした血統は、今の日本では敬遠されがちだが、欧州の競馬にはむしろ合う。しかも、サンデーがそれらを「今ふう」にアレンジして蘇生させた。オルフェーヴルの血統構成は、決して見劣りするものではない。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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