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主催者の縦割りな対応

  • 2012年07月20日(金) 18時00分
 7月17日、読売レディス杯の取材で金沢競馬場に行ったのだが、ネガティブな意味で、ああさすが金沢競馬場だなあと思うことがいくつかあった。

 金沢競馬場は、今どきそこまでせんでも、というほど規制が多い。

「検量室前は基本的に立ち入れませんので、取材は場内でお願いします」と、あらためて言われた。場内でって……、場内で何の取材をしろというのだろう。いや、ぼくの場合は競馬場グルメの取材だけはできるが。

 取材で検量室前に行くときは、職員が同行しなければいけないことになっているのだそうだ。とはいえ今どき職員の数はギリギリでやっているだろうから、業務エリアに同行してくれるようなヒマな職員がいつでもいるわけではない。さすがにメインの重賞のあとは、表彰式の関係などで職員が検量室のあたりにいるので、そのときだけはわりと自由に動けるようになっているのだが。なのでメインレース後以外は、事実上一般ファンと同じ場内にいることしかできないのだ。

 思わず、「今どき、取材証をもらっているのに、検量室前に行けない競馬場なんて、ほかにないですよ」と言ってしまった(実際には、ばんえい競馬も業務エリアはあまり自由には動けない)。すると、「馬場管からそう言われているもんで……」という答えが返ってきた。

 もうひとつ、金沢競馬場でほかの競馬場と異なるのは、業務エリアのラチ沿いでの写真撮影が禁止されていること。重賞のゴール写真も一般エリアからしか撮らせてもらえない。問題になるのは、ラチ沿いの金網のフェンスがけっこう高いこと。何か台になるものを借してもらったりして対応するのだが、その交渉も毎度毎度のことになる。それでも同じように対応してくれればいいのだが、地方競馬主催者の担当者は、地方自治体からの出向や配置換えなどで1〜2年ごとに変わったりするから、人によって対応も変わってくる。「以前はこういうふうにやらせてもらってたんですけど」と言っても、「馬場管が言ってるもんで……」という答えで、それ以上先に進まない。

 なるほど原因は縦割りなところにあるのだと思った。

 馬場管は、決まりだからダメという。我々マスコミの対応をする広報の人は、馬場管がダメと言ってるからダメと伝えるだけ。そこには歩み寄りというものがない。

 たしかに事故が起こらないように競馬開催を行うことはもっとも重要なことだが、ファンに喜んでもらうためには、ファンに対してさまざまな情報を発信していくことも重要だ。そのためには、ここまではやってもいいが、ここからはダメ、という話し合いがなされるべきではないだろうか。そしてその線引きは、状況に応じて判断を変えるべきだし、時代とともに変わっていくものだと思う。今さらこんなことを書くのもなんだが、馬券さえ売っていればお客さんが来たのは遠い昔の話だ。

 これは今回の取材で思ったことではなく、金沢競馬場は10年以上も前からこうした対応が変わらないので、あらためて書いてみた。

 まだちょっと先の話だが、来年11月には金沢競馬場でJBCが行われる。その当日は、おそらくこれまでに経験したことのないほど多くの、ファン、マスコミ、厩舎関係者、そして馬主などのゲストも来る。そのときに、こうした縦割りの対応をしていたのでは、トラブルが起こることは間違いない。改善を望みたい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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