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ぜひ「冠」の奪い合いを!/2008年メイショウサムソン凱旋門賞観戦記

  • 2012年09月07日(金) 18時00分
2008年にnetkeiba.comの携帯版・競馬総合チャンネルに掲載された島田明宏氏による『メイショウサムソン凱旋門賞観戦記』をnetkeiba.comで完全復刻! レース直後の取材だからこそ伝わる陣営の悔しさとは(取材・文:島田明宏、写真:國廣陽子)

 10月5日、フランスのロンシャン競馬場。朝から雨が降ったりやんだりというあいにくの空模様のなか、世界最高峰の大舞台――第87回凱旋門賞が幕を開けた。

「ニセンロクネン、ダービーウィナー。ジョッキーハ、タケユタカ」

馬場入りするメイショウサムソン

馬場入りするメイショウサムソン

 現地時間の午後4時42分、武豊騎手を背にしたメイショウサムソンが馬場入りすると、日本語の場内アナウンスがなされた。そして、1番人気に支持された無敗の3歳牝馬ザルカヴァの鞍上、C.スミヨンの顔がターフビジョンに映し出されると、場内が大きくわいた。

 午後4時53分、凱旋門賞のゲートがあいた。武豊騎手のメイショウサムソンは、両側からはさまれるような格好になり、後退を余儀なくされた。豊はこう振り返る。

「スピードに乗りかけたところで、外の馬にかなりの勢いで前に入られてしまったのが、つらかったですね。位置取りが理想より少し後ろになってしまいました」

 そのまま、道中は、ザルカヴァをマークするような格好で、後方3番手の内を進んだ。

「サムソンは、若干行きたがっていました。結果として、ちょっと窮屈なレースになってしまいました」

 大逃げを打った、オブライエン厩舎のペースメーカー、レッドロックキャニオンが直線入口で失速し、残り15頭の争いになった。

 サムソンは、内ラチぞいからジリジリと脚を伸ばし、前との差を詰めた。一瞬、「ひょっとしたら」と思わせてくれたのだが、外からスパートをかけたザルカヴァに見る見る離されていく。

「直線の途中までは、なかなかいい感じでした。が、最後は止まり加減でした。馬の状態はすごくよかったし、こっちの芝コースを上手に走ってくれました。この馬なら充分チャンスがあると思っていたので、いい結果を出すことができなくて残念です」

無敗で凱旋門賞を制したザルカヴァ

無敗で凱旋門賞を制したザルカヴァ

 サムソンの脇をすり抜けて行ったザルカヴァの勢いは最後まで衰えず、2着に2馬身差をつけてゴールした。これで7戦7勝。サムソンは、ザルカヴァから6馬身ほど離された10着(16頭立て)に終わった。

 サムソンを管理する高橋成忠調教師は、レース後、こう語った。

「ゲートを出たあと、両側から寄られて位置取りが後ろになってしまいました。波に乗れなかったことが敗因でしょうね。久しぶりの競馬でしたが、馬の状態はよかったです。今後、ジャパンカップは当然視野に入っていますし、天皇賞も使えないこともない状態です。このまま終わる馬ではありません」

「残念です」と何度も繰り返した豊は、こう締めくくった。

「また、ぜひ、日本の馬でこのレースにチャレンジしたいですね」

 2年前のディープインパクトにつづき、日本のチャンピオンホースが凱旋門賞に参戦し、警戒されながらも歓迎され、大舞台に花を添えた。今回、サムソンを負かした馬たちとサムソン自身が再戦する可能性もあるだろうし、他の日本馬がリベンジする可能性も、もちろんある。個人的な希望を言うと、これで「世界最強牝馬」の「冠」を得たザルカヴァと、ウオッカ、ダイワスカーレットが激突し、「冠」の奪い合いをしてほしいと思う。

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