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太が選ぶ夏のベストレース、ワーストレース

  • 2012年10月02日(火) 18時00分
10月第1週の太論は、8月末〜9月中旬のレースを対象にしたベストレース、ワーストレース。少々タイムラグはありますが、出遅れたときのジョッキーの心理や、今後楽しみなナイスミーチュー、ローゼンケーニッヒについての見解まで、興味深いお話が満載です!

■小牧ジョッキーは、信用されてない!?
──9月7日は、45歳の誕生日でしたね。残念ながら金曜日でしたが…。

小牧 そうそう。僕はいつも、早めに調整ルームに入るから、いたって普通の金曜日でしたわ。ただ、あとから携帯を見たら、メールがバンバン入ってたわ。

──メールの数は、人気のバロメーターです! では、さっそく、ベストレースをお願いします。

ベストレースは西日本スポーツ杯!

ベストレースは西日本スポーツ杯!

小牧 アドマイヤツバサ(9月2日・小倉10R・西日本スポーツ杯)やね。あの馬はまだまだ元気ですわ。

──ペースを見事に読み切って、積極的に勝ちにいったレースでしたね(出遅れて後方からになったが、向正面に一気に動いて4角では2番手。そこから押し切り勝ち)。

小牧 そうやね。押し切ったっていうのが強かったね。もともと力がある馬なんでね、ジーッとしてて砂を被ったりするのも嫌やったし、僕自身、しっかりゴールまで追ってきたなって。あのレースは嬉しかった。

──ああいう展開は、瞬時に腹をくくるわけですか?

小牧 そうですね。最初から考えていたわけではなくて、ペースを判断してやね。出遅れ癖のある馬やから、ゲートだけは決めようと思ってたんやけどね。案の定、出遅れた(笑)。だからも、“行ってまえ!”って感じで。力があるからできたレースやね。

──とはいえ、6番人気とは、意外なほどに低評価でしたね。

小牧 前回、バッシャバシャの馬場で、後方から伸びてきたのはこの馬だけなんやけどね。だから、時計が掛かったら絶対におもしろいなと思ってました。ファンも読みが足らんね(笑)。

ナイスミーチューで連勝!

ナイスミーチューで連勝!

──宮崎S(8月25日・小倉11R)のナイスミーチューも強い競馬でした(次走、シリウスSで重賞初制覇!)。

小牧 強かった。素晴らしい勝ち方やった。休養明けで人気はなかったけど、力が違ったね。力があるから、ああいう抜け方ができたんやね。状態も、今までにないくらい良かった。休養前までは、馬がゴトゴトだったんですわ。それでいて、いい競馬をしてくれてたんで、休養ですごく良くなってた今回は、自信がありましたわ。

──これもまた5番人気と、実績以上に低評価で。

小牧 信用されてないんやね、小牧ジョッキーが(笑)。

──いえいえ、休み明けが嫌われたんでしょう。ほかでは、ラパヌイ(9月15日・阪神7R・3歳上500万)も強烈でした。大きく出遅れて、万事休すかと思われた一戦でしたが…。

小牧 ああ、あのレースは、一瞬あきらめたわ(笑)。フケがきてるって聞いてたんやけど、ゲートがすごく悪くて。後ろばっかり振り向いてたな。

──フケがくると、後ろを気にするっていいますよね。

小牧 そうみたいやね。これは出遅れるなって覚悟してたんやけど、あまりにも出遅れたんでね。でも、あの馬にしたら、それがかえって良かったんですわ。行ったら行ったで甘くなるから、勝つのが難しい馬なんやけど、この前は出遅れたことで、終いのひと脚が使えたんやね。

ラパヌイ、次走の作戦は…?

ラパヌイ、次走の作戦は…?

──災い転じて…といいますか、それまで先行策が主だった馬ですから、結果的に新味を引き出したかたちですね。ちなみに、次にラパヌイに乗るとしたら、どういった競馬をしますか?

小牧 僕だったら、中団から行くね。

──しかし、出遅れて勝つというのは、なかなかないことですよね。

小牧 うん。いい意味であきらめるからちゃう(笑)? あきらめるというか、出遅れたら出遅れたで、僕は慌てて動いたりしないで、ゆっくり乗るようにしてるから。それがいい結果につながる場合もあるということやね。

──でも、アドマイヤツバサのように、出遅れてもペース次第では早めに動くこともある。

小牧 ああ、マクリに出たりね。力のある馬なら、そういうこともできる。

──そう考えると、レースはまさに生き物ですね。では、ワーストレースというと…。

小牧 それはもう、ローゼンケーニッヒやね(9月8日・阪神8R・3歳上500万)。あれは引っ掛かったねぇ。久しぶりにあんなに引っ張ったわ。でも、引っ掛かることは覚悟の上ですわ。これで乗り替わりになっても、あのときばかりは最低でも中団から競馬をしようと思ってたから。出遅れたんやけど、掛かってもいいから、いつもより行かせてね。あれはもう覚悟の上。絶対に勝たなアカンなと思ったから。ここで負けたら、次はないくらいの気持ちで乗りましたわ。先生も納得してくれてた。

──それでいて4着まできてるわけですから、なんとももどかしい馬ですね。

小牧 うん。でも走るわ。難しいけどね。今回、ちょっと休んだことで、馬が良くなりすぎてんねやね。パワーがついてるんでしょう。あとは、どう制御するかやね。次は神戸新聞杯(後方から追い込んで5着)みたいやけど、2400m大丈夫かな(笑)。うまく折り合えれば、距離は全然大丈夫だと思うんやけど。

──逆に折り合ったときの強さは、この先、ワクワクするものがありますね。

小牧 そうやね。今のデキなら、強いメンバー相手でもいい競馬ができるんちゃうかな。

【次回の太論は?】
9月20日の門別競馬場でのレースを最後に、ジョッキー生活に幕を下ろした愛知の吉田稔騎手。次回は、吉田稔騎手との思い出話から、JRAの騎手免許試験へと話題が展開。知られざる試験内容が明らかに!?
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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