ちょっと前の話題になるが、東京盃でのラブミーチャンは中央の一線級を相手に、まさに快勝といえるレースぶりだった。
近年では中央のダート路線のレベルが格段にアップしたこともあり、南関東以外の地方馬はかなり苦戦している。気になって調べたところ、南関東所属馬と北海道の2歳戦を別にして、ラブミーチャンの東京盃以前に地方馬がダートグレードを勝ったのは、なんと、そのラブミーチャンによる09年の全日本2歳優駿だった。
南関東にしても、中央相手に勝っているのはほとんどが船橋・川島正行厩舎の所属馬。2010年以降、川島厩舎以外で南関東所属馬のダートグレード勝ち馬を拾ってみると、2010年TCK女王盃のユキチャン(川崎・山崎尋美厩舎)、2011年浦和記念のボランタス(同)、そして今年はTCK女王盃のハルサンサン(船橋・佐藤賢二厩舎)しかいない。そうしてみると、毎年コンスタントにダートグレードを勝っている川島正行厩舎の活躍は、地方競馬の中では驚異的ともいえる。
また北海道の2歳ダートグレードにしても、近年勝っているのは角川秀樹厩舎か堂山芳則厩舎にほぼ限られる。
中央との交流重賞では、そうしたごく一部のきわめてすぐれた厩舎の活躍馬しかいない状況で、牝馬ながら5歳になっても中央の一線級と互角以上の勝負をしているラブミーチャンは、地方競馬では傑出した活躍馬といえるだろう。
全日本2歳優駿以来、2年10か月ぶりのダートグレード制覇となった要因としては、今年からノーザンファームしがらきの坂路で鍛えられているということが挙げられる。ノーザンファームしがらきといえば、ご存知のとおりオルフェーヴルをはじめとして中央で多くのGI馬を輩出していることでも話題となっているトレーニング施設だ。
ラブミーチャン以前に中央相手に活躍した地方馬としてはコスモバルクが挙げられるが、外厩制度の最初のケースとして有名になったように、デビュー前から、そしてデビューしてからもビッグレッドファームの坂路で鍛えられていた。
最近では栄進(エーシン/エイシン)軍団が、中央でもまだまだ活躍できそうなレベルの馬を笠松や兵庫に移籍させて重賞戦線を席巻している。栄進軍団もまた、自前で坂路のあるトレーニング施設を所有しているがゆえの活躍と言えそうだ。
今や日本の競馬は世界でもトップレベルになったことは間違いなく、そうしたレベルの中央馬を相手に地方馬が互角に戦おうと思えば、やはりそれなりの施設で鍛えられなければ無理ということなのかもしれない。
施設が充実しているはずの中央馬ですら、近年では外部の施設で鍛えられて強くなっていることを考えると、いずれこうしたところからも、中央/地方という枠組みがあまり意味のないものになっていくのかもしれない。