2008年にnetkeiba.comの携帯版・競馬総合チャンネルに掲載された斎藤修氏による『カジノドライヴ・BCクラシック観戦記』をnetkeiba.comで完全復刻! カジノドライヴ、連覇を狙ったカーリンは果たして・・・(取材・撮影:斎藤修)
全米各地の主要競馬場の持ち回りで行われるブリーダーズカップ(BC)に毎年来ていると、あらためてアメリカの広さを実感させられる。10月下旬から11月上旬のこの時期、真冬のような寒さの中での開催になることがあるかと思えば、今年会場となったサンタアニタ競馬場は温暖な南カリフォルニアにあり、連日30度を超える晴天が続いていた。
異なるのは気候ばかりではない。競馬場によって馬場状態も違い、特に今年のBCクラシックは、25回を数える歴史で初めてダートではなくオールウェザー(サンタアニタ競馬場ではプロライドという製品を使用)の馬場で争われることになった。
北米のオールウェザーは、芝での活躍馬がたびたび好走することから、メインのBCクラシックには凱旋門賞に出走(7着)したデュークオブマーマレードのほか、ヘンリーザナヴィゲーター、レイヴンズパスが挑戦してきた。
しかし、やはり最大の注目は、連覇が期待されるカーリン。今年はドバイワールドCも制し、ダートではまぎれもない世界最強馬。ただこれまで実戦ではオールウェザーの経験がなく、それが唯一ともいえる懸念材料だった。
本馬場に向かうカジノドライヴ
そしてベルモントSを直前のアクシデントで出走を断念したカジノドライヴは、あらためて北米最大のタイトルに挑むことになった。
カーリンは単勝では2倍を切る断然の1番人気。カジノドライヴは2週前にオールウェザーの一般戦を勝っていたこともあり、一時は2番人気にまで推されたが、最終的には4番人気に落ち着いた。
好スタートを切ったカジノドライヴは、ほかにハナを主張する馬がなく、内の2番枠だったこともあり、想定外にハナを切る展開になった。そしてカーリンは中団のやや後ろを追走した。3コーナー過ぎ、カーリンがものすごい勢いで大外をまくってきた。4コーナーで先頭に立ち、そのまま突き抜けるかと思われたが、意外にも直線では伸びない。
勝ったのは伏兵レイヴンズパス
そしてゴール前で一気に突き抜けたのは、カーリンの後ろを追ってきたレイヴンズパスだった。ヘンリーザナヴィゲーター、ティアゴと続き、カーリンは4着に敗れた。
カジノドライヴは、3〜4コーナーで後続に一気に並びかけられたところで手ごたえをなくし後退。勝ち馬からは20馬身ほども離された最下位に終わった。
「馬の雰囲気はよかったし、期待はしていた。結果的に使い出しが遅くなったぶん、押せ押せで来たところが出たのかな。ちょっとローテーションに余裕がなかった」と藤沢和雄調教師は残念な表情を見せた。このあとは日本に戻ってしばらく休養。自己条件となる1600万クラスから使い始め、再びアメリカに挑戦するという。
勝ったレイヴンズパス、2着のヘンリーザナヴィゲーターはともに欧州のマイル路線の活躍馬。この結果だけで、サンタアニタのオールウェザーコースは芝が得意な馬に向いていると言い切ることはできないが、地元北米のトップホースが欧州からの遠征馬に完敗したことは、衝撃とも言える結果。
四半世紀が過ぎたBCは、ひとつの転換点を迎えたように思う。