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「重賞は乗らなアカン」クラレントに乗らなかった理由とは!?

  • 2012年11月06日(火) 18時00分
11月4日、京都3Rの本馬場入場後に落馬。左腓骨骨折により、全治1か月の診断が下された小牧騎手。怪我の詳細については、いずれ当コラムでお伝えできると思いますが、とにもかくにも1日も早い復帰が待たれます。今回のお話は、もちろん怪我をされる前、3週連続未勝利に終わった10月後半の収録です。期待の2歳馬での惜敗や、ローゼンケーニッヒのままならない競馬、そしてクラレントの富士Sでの勝利など、その時々の心境をじっくりと語ってくれました。

■勝てないと、気分的に疲れが溜まるわ
──では、恒例のベストレースをお聞きしたいんですが、ここのところ、ちょっと不調ですか?

小牧 そうなんです。僕、ここ3週(10月6日〜21日。翌週土曜日の京都7Rをトウショウヘイローで勝利)、勝ってないんだよね。こんなこと、珍しいんやけど。

──どうしたのかな…と、ちょっと心配しておりました。

小牧 いいレースはしてると思うんやけどね。なんか勝ち運に見放されてるかなって。勝てないとやっぱり嫌やね。気分的に疲れが溜まるわ。でも、これで焦りが出てきたりすると、それこそ騎乗停止になったりしてしまうから、楽しんで乗っていかなアカンなと思ってる。もうあと何年乗れるかわからんし、そのうち勝つやろってくらいの気持ちでね。

──そうは思いつつ、やはりストレスになる。

小牧 そうなんやねぇ。やっぱり勝ちたいな〜と思うよ。なんせ、いい馬に乗せてもらってるんでね。ここんとこ、1、2番人気をよう飛ばしてるわ…。橋口先生のところの馬はとくに、人気しやすいからね。

惜しい競馬が続くと…

惜しい競馬が続くと…

──期待の2歳馬たちも、惜しい競馬が多かったですね。

小牧 うん…。レッドアリオンも、結局、(敗因は)距離やったな(10月20日・京都3R・2歳未勝利・芝1800m4着)。

──しかし、あの馬はキレますね。

小牧 そう、切れる。切れるぶん、長くいい脚を使えないんやね。だから勝てない。でも、前回は完全に距離やね。結局は、あの兄弟(リディル、クラレント)はマイルがいいもんね。距離が合えば走ってくるよ。走ってもらわな困る。

──「背中がいい」と期待されてたサトノユニコーンも、初戦、2戦目と僅差の3着でした。

小牧 2戦目は、自分なりに最高のレースをしたつもりやけどね。あの馬、本当に乗りやすいんです。すごく背中がいい。それだけにね…。現状では、少し頭が高いかな。首の使い方が、まだ上手じゃないというかね。

──でもこの2頭に関しては、すぐに勝ち上がれそうですよね。

小牧 うん、そう思ってるんやけどね。そう思いながら、この前も勝てなかったから…。そんなレースが、ここのところ続いてるわ。あ、あと楽しみなのは、2戦目のダートで勝ったグレイスフルリープ。あの馬はダートで楽しみですわ(11月4日の2歳500万を、川須騎手の手綱で8番人気2着)。

──3歳馬ではローゼンケーニッヒ。なんとももどかしいですね、あの馬は。

小牧 ホントやねぇ。ホントにもどかしい。上手いこと乗れんねぇ。この前も(10月20日京都8R)、一番後ろからじゃ勝てないし…と思いつつ、それでも出していかずに上手く乗れるかなぁと思って乗ってたんやけど、まぁ引っ掛かったわ(5着)。ハミが外れん。僕じゃ合わんのかもしれんから、次は誰かほかの人を乗せてくださいって頼みましたわ。力があるのは確かやから、このままではもったいないからね。本音を言えば乗りたいんやけど、一度、他の人が乗るのを見てみたいと思って。難しいね、馬乗りは。

──ローゼンケーニッヒを見ていると、本当にそう思いますね。能力があるのはわかっているし、小牧さんも毎回いろいろ試されているのに…。

小牧 わかる? そうやねん。僕もいろいろやってんねんけど、上手く乗れん。神戸新聞杯のときは上手く乗れたんやけど、あれはもうメンバーが強いし、後ろから行こうって思ってたからね。ああいう競馬だったら、上手く乗れるんですわ。でも、勝ち切るために、少しでも位置を取りに行こうとすると、噛んでしまうんだよね。

──リフレッシュが必要なんでしょうか。

小牧 うん、放牧に出るらしいよ。僕自身、現状できることはすべてやったつもりだから、本当に一度、手を替えてもらったほうがいいのかなと思います。馬はすごく良くなってるからね。

──ほかでは、ヴィクトリースターも際どい2着でしたね(10月20日京都10R・古都S)。

小牧 あのレースは難しかったね。早めに先頭に立つと遊ぶんですわ。でも、相手(勝ったアドマイヤラクティ)が後ろから行く馬だったんで、目標にできなかった。だから僕、詰まった競馬をしたほうがいいなと思って内に入れたんですけどね。そしたら、パカーッとうまいこと内が開いてしまってね。で、初めて2400mを使ったでしょう。だからか、ちょっと噛んだのもあってね。僕の感触では、2000mくらいがベストやね。あの日はヴィクトリースターがいたから、クラレント(富士S)乗りに行かんかったんやけど…。

──そうだったんですか。

小牧 そう。悔しいね。やっぱり、重賞は乗りに行かなアカンね。重賞で勝たれたらショックが大きいから、ちょっと考えましたわ。東京が合うのもあるやろうけど、稽古で51秒台で動いててね。僕、ビックリしたわ。それまでそんなに動かへんかったのに。助手さんもすごく状態がいいって言ってたから、これは勝つかもなと思ってたんやけど、その通り、きっちり勝ったね。

──たしかにそれまでは、53秒台で「今回は動いた」っていう評価でしたものね。

小牧 そうそう。もともとスピードのある血統やからね。あの日はね、ヴィクトリースターだけではなく、レッドアリオンとローゼンケーニッヒも乗りたかったし、ほかにもいい馬がそろってたんですわ。だから、橋口先生も「どっちに行く?」って聞いてきてくださってね。改めて、重賞は乗りに行っとかんとアカンなと思ったわ。なんかいろいろ、ちぐはぐやなぁって思うけど、まぁ、こういうときもあるでしょ!

【次回の太論は?】
10月中旬、JRAジョッキーの送迎タクシー代について、会計検査院が“無駄遣い”を指摘…との報道がありました。この報道だけではいまいちピンとこないジョッキーの移動事情。いったいどういう決まりがあって、なにが無駄遣いなのか!? 小牧騎手にたっぷりとお聞きします。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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