最近は長距離戦は少なくなり、かつてとは逆にステイヤーの評価が低くなりつつあったりする。しかし、長距離戦の価値は、ステイヤー型が少なくなると同時に、かえって重要になりつつある。というのは、距離延長に耐える総合能力があってこそ、マイル戦前後のレベルも高くなることは当然で、スタミナのある馬と、スピードに優れる馬の配合が強さのレベルを引き上げる。マイラーやスプリンター同士の配合は、ステイヤーとステイヤーの配合が意味をなさないのと同様に、やっぱり意味を持たず、ただレベルの低下を招くだけだからだ。生産の歴史がそれを教えている。
短距離戦にスピード負けがあれば、長距離戦にはスタミナ負けがある。3200mの天皇賞にはいつものマイル戦や、中距離戦以上に価値ある中身を期待したい。つまり、超スローで距離が保ってもなんにも意味がなく、バテる馬がいてもそれこそ当然のこと。とくに先行する馬の使命は大切で、ペースメーカーを出走させるのをよしとしない日本の長距離戦では、逃げ=先行グループは、しかるべきレベルのペースを作らないといけない。もしスタミナ能力に勝るなら、それで好走できることは何十年、何百年の歴史が教えている。
小林淳一騎手の3番イングランディーレに期待する。これがベテラン騎手で、G1に慣れすぎ、できるだけペースを落とそうとする人馬なら注目に値しないが、たまたま小林淳=イングランディーレはG1級の経験が少ない。必要以上にペースを落としたりせず先導してくれる可能性がある。小林淳はホットシークレットの3200mで逃げ、価値あるレースを作ったことがある。今回も強気の挑戦者。自分のペースで行って、それでバテたり捕まるならそれは仕方がない。長距離のG1は力を出し切ることが最初のテーマで、たとえば後方で脚を余すなど最低。レース全体のレベルを上げ、現在の芝なら最少限、3分16秒ぐらいで走るのを目安にしてほしいものだ。