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ばんえい頑張れ記念

  • 2012年12月21日(金) 18時00分
 20日にリリースされたばんえい十勝からのお知らせによると、ばんえい十勝を主催する帯広市に対して、会社役員・小林英一さん(芦別市在住)から1千万円の寄付があり、12月23日のばんえいダービーより「ばんえい頑張れ記念」と銘打ち、今シーズン中(来年3月まで)の重賞競走等20レースに、従来の賞金とは別に特別報奨金が交付されるという。

 ばんえい記念最大のレース、1着賞金300万円のばんえい記念には、賞金とは別に200万円(内訳は、馬主100万円、調教師50万円、騎手30万円、厩務員20万円)を交付。また、ばんえい記念以外のBG(ばんえいグレード)1の重賞には80万円、BG2は50万円、BG3は30万円、特別競走(10レース分)は25万円となっている。これによって、1着馬の関係者が受け取る総額は、約6〜9割増しとなる。

 ばんえい競馬は、06年度限りでの廃止がいったんはほぼ決定的になったものの、07年度からは帯広市単独での開催で現在まで続いている。とはいえ、引き続き予算的にはギリギリの状態での存続だ。

 かつて1着賞金が1000万円だったばんえい記念は、先にも示したとおり今では300万円。それ以外の重賞の1着賞金も500〜200万円だったものが、今では100〜50万円となっている。そして現在最下級条件の1着賞金はわずか7万円。賞金は3着までしか支給されない。下級条件の馬は、月に1勝しただけでは、出走手当を合わせても、ひと月十数万円の預託料にも届かず、じつに厳しい経済状況となっている。

 それでもばんえい競馬が廃止にならずに続けられているのは、世界で唯一ということことが最大の要因だと思う。サラブレッドの競馬と違い、これを廃止してしまえば、馬券発売をともなうばんえい競馬というものがこの世から消えてしまうのだ。それだけに、馬主や生産者も含めた厩舎関係者には、ギリギリのところで踏ん張っている人たちがたくさんいる。

 ちなみに1千万円を寄付した小林英一さんは、今年JRAの皐月賞と菊花賞の二冠を制し、有馬記念でも人気を集めることになるであろうゴールドシップのオーナーで、ばんえい競馬の馬主でもある。

 今年3月には、ばんえい競馬を舞台にしたドラマ『大地のファンファーレ』がNHKで全国放送され話題になると、全国からばんえい競馬を訪れるファンや観光客が増えたという。とはいえ、なかなか馬券の売上げにつながらないというのが現状だ。

 ばんえい競馬は、「北海道の馬文化」として2004年に北海道遺産に登録されたが、だからといってどこかからお金がまわってきて保護されているというわけではない。世界で唯一のものであるならば、馬券の売上げだけに頼らずに、それをどこかで支えていく予算やしくみはできないものだろうか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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