今年のオークスに大きな話題を提供したアドマイヤグルーヴ。エアグルーヴ、ダイナカールとさかのぼって、それぞれの母のオークス勝利のシーンをどれだけ思い出すことが出来るか、競馬の不思議を感ぜざるを得ません。牡馬でなく牝馬だからこそ、この思いは強いのです。
アドマイヤグルーヴは、平成12年のセレクトセールで、牝馬史上最高額の2億3千万円で落札されました。当然、クラシックを意識した配合ですが、オーナーの近藤利一さんはその当時、これで走らなかったらどうすると生産者の顔をのぞき込んでいらっしゃいました。雑誌の座談会でご一緒したときです。そこには、生産者の他に調教師の橋田さんも同席されていて、話が脱線したときのこと。もちろん、冗談でしたが、エアグルーヴの初仔を手にされたばかりで、その先の3年がいかにも長いと感じられ、無事にレースに出られるか、是非とも走ってほしいという思いが、特に強いときだったと思います。
母が発熱で回避した桜花賞に駒を進めたときには、この馬の運の強さを感じましたが、まさかの出遅れ、やはりこの馬はオークスなのかとこの日を楽しみにしたものでした。
クラシックレースの存在価値は、ひとつには伝承継承されていく血統を見ることで大きくなります。そこに目がいくようになれば、競馬ファンとして本物ではないでしょうか。
競馬の基本がそこにあり、そこからふくらんでいくものに、競馬の魅力がひそんでいます。ですから、素生のわかっている馬でないと、クラシックは楽しめません。そして、できることなら、沢山の方々にそういう味わい方をしてもらいたいと、いつも願っています。クラシックは、そういう競馬の大切な側面をかいま見るためのレースです。知らない血統の馬が勝ったときには、その背景にあるものを自分なりに調べておくと、必ず、将来の役に立つと、いつも実感しています。