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残念!NARグランプリ

  • 2013年02月08日(金) 18時00分
 7日、地方競馬の年度表彰であるNARグランプリ2012の表彰式が行われた。この日の午前中にはJRA騎手免許試験の合格者発表があり、地方競馬の現役騎手からは、大井の戸崎圭太騎手、福山の岡田祥嗣騎手が合格。戸崎騎手については、NARグランプリ表彰式の途中にこのための記者会見も行われた。

 戸崎騎手といえば、NARグランプリの騎手・調教師の表彰が部門別に行われるようになった09年から、勝利数、賞金のタイトルを4年連続で獲得。しかし今年3月から活躍の場が中央に移る。また戸崎騎手が主戦をつとめてきたフリオーソは世代別の最優秀馬に7年連続で選出されたが、昨年限りで引退。地方競馬は今年、節目の年となりそうだ。

 ところでこうした表彰には、「この成績なら、普通の年なら選ばれていたのに」とか、「表彰対象にはならないものの、これはすごい成績」というものが、毎年必ずいくつか見られる。今回は「残念!NARグランプリ」と題して、表彰はされなかったけれど、惜しい記録やすごい記録というものを拾い上げてみたい。

 まず最優秀勝率調教師賞は、名古屋の川西毅調教師が35.8%というきわめて高い勝率で、3年ぶり2度目の受賞。昨年30%越えは川西調教師のほかにはひとりだけで、これが岩手・菅原勲調教師の31.7%。菅原調教師は昨年4月に厩舎を開業したばかりで、それでこの勝率はすばらしいと思う。

 最優秀勝率騎手賞は、高知の赤岡修次騎手が4年連続で受賞。しかし昨年は30.8%と、一昨年までよりやや低い数字だった。これに2位の佐賀・山口勲騎手が30.2%と肉薄。ちなみに12月30日までの地方のみの成績では、山口騎手が30.7%、赤岡騎手が30.6%だった。しかし大晦日の開催では山口騎手が5戦0勝だったのに対し、赤岡騎手は10戦5勝の固め勝ち。またNARグランプリの表彰ではJRAでの成績も含まれるため、この年は山口騎手がJRAで10戦1勝だったのに対し、赤岡騎手はJRAでの騎乗はなし。

 結果、赤岡騎手が0.6ポイントの差でタイトルを守ることとなった。山口騎手は2010年に294勝を挙げ、地方全国リーディングとなったものの、JRAでの勝利数の差で最優秀勝利回数騎手賞は戸崎騎手に、ということもあった。今年はその戸崎騎手がJRAに移籍。高知でも2位以下のジョッキーの台頭が著しく、赤岡騎手も絶対的な存在ではなくなってきた。昨年通算3000勝を達成して特別賞を受賞した山口騎手だが、今年はいよいよ勝利数と勝率の両タイトルを狙えるかもしれない。

 最優秀勝利回数調教師賞は、昨年自身が記録した歴代最高記録を大幅に更新する290勝で高知の雑賀正光調教師がダントツの成績。しかし09年に239勝でこのタイトルを獲得した名古屋の角田輝也調教師も、その後229、230、187勝でいずれも2位と、コンスタントにきわめて高い成績を残していることも評価さるべきだろう。

 もともと角田調教師は、06年に地方の調教師としては初の200勝超えとなる204勝を達成。さらに08年には213勝を挙げ、当時は驚異的な数字と言われた。にもかかわらず、それまでNARグランプリでは表彰の対象とはならなかった。09年から騎手・調教師が部門表彰となったのは、こうしたことがひとつのきっかけとなったと思われる。

 勝利数の部門では、南関東の調教師が受賞対象となることはほとんど不可能だが、浦和・小久保智調教師は昨年131勝を記録。南関東では06年に船橋・川島正行調教師がちょうど100勝を挙げ、南関東では初の100勝超えを記録し、これは当時としては驚異的と言われた。川島調教師は09年にも112勝を挙げ記録を更新。昨年の小久保調教師は、その数字をさらに上回ることとなった。南関東では、他の3場に比べて開催日数も少なく、施設も必ずしも充実しているとはいえない浦和所属の調教師がリーディングになったということでも驚きだった。

 今年もっとも気になるのは、抜群の成績を残してきた戸崎圭太騎手の年間300以上の勝ち星と10億円を超える賞金が、どの騎手に分散するのか、もしくは戸崎騎手に替わる誰かに集中するのか、ということではないだろうか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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