「園田と中央のダートの違いは?」というユーザーの質問から、過酷な冬競馬の話になり…。冬場のダート競馬の危険性や、体重との戦いとなる防寒対策など、ジョッキーだけが知る冬競馬の舞台裏を語ってくれました。
■レース中は、寒さなんて全然感じない!?
──今回は、ダート競馬が多いこの時期ならではといいますか、「園田競馬のダートと中央競馬のダートは、どこが違いますか?」という質問がきています。
小牧 まず、砂の質が違うね。中央の砂は、やっぱり質がいいし、よく手入れされていると思う。地方でも年に何度か砂の入れ替えをしているけど、やっぱり重いね。なんでかわからんけど、ゴーグルや馬具にものすごぐ引っ付くんですわ。
──砂厚の違いもありますよね。
小牧 地方のほうが深いね、たぶん。
──中央は一応、全場8センチと決められていますからね。
小牧 そうなんや。初めて知ったわ(笑)。この時期はね、地方も中央も凍らんように凍結防止剤を撒いているから、砂に粘り気が出て、めちゃくちゃ引っ付く。これにはホンマに苦労してます。簡単に乗っているように見えるかもしれんけど、ホントに前が見えなくなることがある。この時期は毎年やね。
砂で視界不良になることも
──みなさん、透明の砂除けを重ねてしていらっしゃいますものね。
小牧 そうそう、通称ダート板ね(おもにバレットがアクリル板を切って、手作りしている)。2枚は絶対にしているし、3枚していることもある。とくに、内でずーっと我慢せなアカンような馬のときには3枚やね。そもそも、前は重ねてしているジョッキーなんていなかったのに、最近の傾向なんかなぁ。まぁ、凍らせないことも大事やから仕方がない面もあるけど、今年の京都はとくにひどいね。前が見えないのはホンマに往生するねん。
──それは改善の余地ありですね。
小牧 ホンマやねぇ。馬の目にも絶対に引っ付いているはずやのに、よう目を開けていられるなと思って。馬って不思議やわ。
──続いても、冬競馬ならではの質問です。「冬場の競馬はものすごく寒いと思うのですが、ジョッキーのみなさんは防寒対策などされているのでしょうか?」というものです。
小牧 この前はね、カイロを貼ってた。それだけで全然違うねん。ただ、カイロのぶん、体重が重たくなるからねぇ。腰にもう1枚貼ろうと思ったけど、そのぶん重くなるんやったら、なんか食べたほうがいいわ、と思ったり。
──カイロ1枚の重さを気にしなければならないというのは、体重制限のあるジョッキーならではですね。
小牧 そうやね。体重を気にしないでいいなら、それこそベタベタ貼ってもいいんやで。あと、工夫するとしたら、アンダーシャツやね。僕の場合は、軽くて薄くて暖かいアンダーシャツを着て、その上に風を通さないナイロン素材のごく薄いジャンパーのようなもの(モンベルという登山用の防寒具)を着て、プロテクターを付けて、最後に勝負服を着てます。
──アンダーシャツは、何を着てもいいんですか?
小牧 うん、自由やで。デサントのアンダーシャツを着てる人が多いけど、それこそ、ユニクロのヒートテックとかも軽くていいよね。僕も着てるよ。でも、基本的にみんな薄着やで。乗ったら暑くなるから、冬場でもアンダーシャツは半袖を着てる人もいるくらいやから。寒いのは、乗る前と返し馬と輪乗りのときで、レース中は寒さなんて全然感じないからね。
──集中力のなせる業ですね。
小牧 それより、ケガをしてから、なかなか体重が落ちんようになってね。1月3週目の土曜日に乗ったあと、やっといつもの体重まで落ちた。それまでは、何をしても落ちなくて、前日の金曜日なんて、めずらしく一切食べなかったからね。
酒抜きで減量に勤しむ
──大好きなお酒も…?
小牧 うん、抜いてた。というより、体重が重たくて飲まれへんねん。僕としてはめずらしいことやで(笑)。土曜日のレースの後、ようやく体重が落ちたから、調整ルームで飲んでしまったけど。
──休養中も体重は変わらないとおっしゃっていましたが、やはり、リズムが狂ったんでしょうね。
小牧 そうやねん。週末に向けて体重を落とすというリズムが、完全に狂った。一時期は、ホンマに何をしても落ちなかったからね。でも、数を乗り出したらそんなこともなくなって。ようやくスッと落ちるようになったわ。やっぱり動かなアカンちゅうことやね。これでカイロをもっと貼れるわ。
【次回の太論は?】
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