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新種牡馬、それぞれの明暗

  • 2013年02月22日(金) 12時00分
 新種牡馬チチカステナンゴの不振は、導入した社台グループ、他の大手の牧場やオーナーにとっては大きな誤算となっている。

 先週のコラムで、今年のクラシック戦線に下克上が起きていると書いた。ディープインパクトの出遅れをその一因に挙げたが、もう1頭はこのチチカステナンゴだ。

 2008年の欧州クラシックで、2世代目のヴィジオンデタが仏ダービーを勝利。にわかに注目を集める中で、社台グループが導入を発表したのはその暮れのことである。

 支流は違うが、父系はトニービンと同じグレイソヴリン系。そのトニービンがサンデーと抜群の和合性を見せていたことから、白羽の矢が立ったのだ。サンデー系牝馬は加速度的に増殖中。それに合う非サンデー系種牡馬の模索が急務で、大きな期待を担っての種牡馬入りだった。

 当然ながらキングカメハメハ、クロフネ、シンボリクリスエスらに向かっていた一級のサンデー系繁殖牝馬群が、矛先をこのチチカステナンゴに変えた。

 ところが、2月17日の時点で、JRAの勝ち馬は8頭。そのどれもが昇級戦で伸び悩んでいる。先週のセントポーリア賞も、ポポルブフが勝ち上がりの内容から穴人気に推されたが、12頭立ての9着に沈んでしまった。

 この不振が、サンデー系繁殖牝馬群の総体的なレベルダウンを招き、サンデー系種牡馬を優位に立たせる一因となっている。だが、その大将格ディープインパクトも、昨年ほどの勢いが見られない。

 結果として、それに準ずるフジキセキ、ハーツクライや、ロサード、オンファイアらのマイナー種牡馬、また非サンデー系ではローエングリンらの台頭を招いている。

 一過性のものであると信じたいが、続くハービンジャー、ワークフォース、タートルボウルが同じ失敗を繰り返すなら、社台グループ、大手の牧場やオーナーにとっては深刻な事態となるだろう。

 サンデーの血を受けた日本で最高の繁殖牝馬群が、共倒れになってしまうからだ。血のジレンマが静かに忍び寄っている。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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