新種牡馬チチカステナンゴの不振は、導入した社台グループ、他の大手の牧場やオーナーにとっては大きな誤算となっている。
先週のコラムで、今年のクラシック戦線に下克上が起きていると書いた。ディープインパクトの出遅れをその一因に挙げたが、もう1頭はこのチチカステナンゴだ。
2008年の欧州クラシックで、2世代目のヴィジオンデタが仏ダービーを勝利。にわかに注目を集める中で、社台グループが導入を発表したのはその暮れのことである。
支流は違うが、父系はトニービンと同じグレイソヴリン系。そのトニービンがサンデーと抜群の和合性を見せていたことから、白羽の矢が立ったのだ。サンデー系牝馬は加速度的に増殖中。それに合う非サンデー系種牡馬の模索が急務で、大きな期待を担っての種牡馬入りだった。
当然ながらキングカメハメハ、クロフネ、シンボリクリスエスらに向かっていた一級のサンデー系繁殖牝馬群が、矛先をこのチチカステナンゴに変えた。
ところが、2月17日の時点で、JRAの勝ち馬は8頭。そのどれもが昇級戦で伸び悩んでいる。先週のセントポーリア賞も、ポポルブフが勝ち上がりの内容から穴人気に推されたが、12頭立ての9着に沈んでしまった。
この不振が、サンデー系繁殖牝馬群の総体的なレベルダウンを招き、サンデー系種牡馬を優位に立たせる一因となっている。だが、その大将格ディープインパクトも、昨年ほどの勢いが見られない。
結果として、それに準ずるフジキセキ、ハーツクライや、ロサード、オンファイアらのマイナー種牡馬、また非サンデー系ではローエングリンらの台頭を招いている。
一過性のものであると信じたいが、続くハービンジャー、ワークフォース、タートルボウルが同じ失敗を繰り返すなら、社台グループ、大手の牧場やオーナーにとっては深刻な事態となるだろう。
サンデーの血を受けた日本で最高の繁殖牝馬群が、共倒れになってしまうからだ。血のジレンマが静かに忍び寄っている。