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潜在能力を発揮できるのか

  • 2013年03月08日(金) 12時00分
 今週は桜花賞トライアルのフィリーズレビュー。競馬ブックの予想欄に目をやると、驚いたことに阪神JFで17着に敗れたサウンドリアーナに、6人全員がきれいに◎を打っている。

 この馬の潜在能力の高さを、それだけ誰もが認めているということなのだろう。しかし血統の立場としては、父のケイムホームがどうも引っかかって仕方がない。

 アメリカの競走成績に関しては、サンタアニタダービーなど重賞8勝(うちGI3勝)と文句のつけようがないが、肝心の種牡馬成績がお粗末すぎる。

 北米に残してきた産駒で重賞ウイナーは、GIIIを勝ったパッションただ1頭だけ。遺伝力を疑わざるを得ない内容である。せっかく良質の繁殖牝馬を用意してもらっても、その良さを殺しているようにすら見える。

 父系はかつて北米で猛威をふるったミスタープロスペクター系で、依然として勢力を誇っている。しかし、今は主流血統の多くに入り込み、昔のような何でもかんでも成功する神通力は消え失せている。

 一方、サウントドリアーナの母系に目をやると、母の父にはダンシングブレーヴが鎮座している。1980年代を代表する欧州の最強馬で、種牡馬となっても奇病と戦いながら偉大な足跡を残した。



 ブルードメアサイアーとしてもこれまた素晴らしく、母系から成長力、スタミナ、大レースの底力を補強するのに一役買っている。だから非力な父を持つ馬でも、母の父にダンシングブレーヴが入っていれば警戒を要する。スイープトウショウ(宝塚記念、秋華賞、オークス2着)がその好例だ。

 もしサウンドリアーナが父ケイムホームの力で走っていると考えるなら、そろそろ危険水域と用心せねばならない。だが、母の父ダンシングブレーヴの助けを得ていると考えるなら、まだまだ伸びしろが見込める。



 果たしてサウンドリアーナが、母の父ダンシングブレーヴの良さをうまく引き継いでいるかどうか。北米のケイムホーム産駒に前例がないだけに、迷って仕方がない。今週のフィリーズレビューは静観しようと思う。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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