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コース変更の落とし穴

  • 2003年06月11日(水) 14時14分
 レースを見るとき、と言っても、レース実況をするときと言った方が正確ですが、ひとつの目安があります。それは、各馬が直線に入るとき、苦しく脚色が怪しいものはコースの内に、余裕のあるものは外にと、だいたい決まっているということです。

 直線のせり合いをしゃべるときのコツとして、この点を承知していれば、なんとかなるというのが常識なんですが、これがそうでなくなると厄介なことになります。

 先週の安田記念がそうでした。新東京コースのAコース、その前のオークス、ダービーはCコースを使っていたのが、この週からこちらに変更され、明らかに内側有利。加えてタイムの速い馬場で、どう走ったらいいかが見えていました。外枠の追い込み馬は、レースの前から苦戦は必至の状況で、はっきり言って興味は半減でした。直線に入って、なかなか伸びてこない外側の馬。と言って、走りやすい内側は込み合っていて脚のあるものは前が壁になって息苦しい状態。ほんの一瞬のスキを突いて抜け出す馬を見つけなければなりません。刻々と戦況が変わっていくのであれば、ある程度の予感もするのですが、そうこうするうち、あっという間に瞬間、馬群を避けて外に出せた馬が差してきてゴールイン。内か外かを必死でしゃべるというのがレースの終末と、正直言って、味気ないのです。

 脚色が読めるかどうか、それはレースを盛り上げることができるかどうかに関係してくるのです。

 レース実況とレースをする騎手との心理状態は似ていると言います。ならば、恐らく、CコースからAコースへの変更で抱いた思いは、一緒であったと思います。キメ細かい馬場管理は、ある面ではありがたいのですが、今回のようなケースは、逆に、戸惑いを生むばかりではないかと思いました。なんとかできないものでしょうか。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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