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新人騎手のデビュー

  • 2013年03月15日(金) 18時00分
 3月14日、地方競馬全国協会より免許試験新規合格者の発表があり、4月からあらたに地方競馬で9名の新人騎手がデビューすることになった。

 これに先駆け、9日に地方競馬教養センターでマスコミ向けの記者会見があったので、わずかな時間ではあったが、デビュー予定の騎手候補生たちに話を聞いてきた。

 近年の傾向として、地方競馬でデビューする新人ジョッキーは、厩舎関係者や馬主の血縁が減ってきているように感じる。かつてであれば、そうした関係者が必ず数名はいたものだ。今回の9名のうち、祖父がジョッキーだったという候補生がひとりだけいた。しかしその現役時代は知らず、牧場でその祖父が調教をつける姿を見てカッコイイと思ったという。ちなみに父は競馬には関係ない仕事をしているとのこと。

 小さい時に父に競馬場に連れて行ってもらったか、テレビやゲームで競馬に憧れたというパターンがやはり多い。

 そして記憶に残っている馬について聞いてみたところ、ディープインパクト、ウオッカ、ブエナビスタなどを何人かの候補生が挙げていた。なるほど17〜19歳の彼(女)らにとっては、これら個性的で印象的な馬たちが活躍していたのは小学生の高学年から中学生にあたり、なるほどその年頃にこうした馬たちの衝撃的なレースを見れば、騎手に憧れるには十分だろうなあとも思った。

 そして近年、割合としてかなり増えているのが、競馬学校の試験に合格するための乗馬スクールに通っていたという子たちだ。そこから中央と地方の試験を受けて、地方だけ合格したからという候補生が何人かいた。なるほど今は入口が地方競馬でも、努力と才能次第では中央へという可能性はある。今後、その壁がさらに低くなることはあれ、再び壁が高くなるということはおそらくないだろう。

 9名の所属厩舎の内訳は、北海道2名、浦和2名、船橋、大井、川崎、名古屋、兵庫が各1名となっている。地区でいえば南関東が5名とやはり多い。

 厩舎関係者の血縁が多かったかつてであれば、すでに所属厩舎が決まっていて入学してくる子も多かったが、今はそうではない。教官の方々は、候補生の所属先を決めるのにかなり心を砕いているそうだ。まずほとんどの子たちが南関東を希望するのだと。なるほどそれはそうだろう。

 とはいえ、南関東でデビューしてもなかなか騎乗馬には恵まれない。そうした現実を説明して、説得して、何人かはみずから南関東以外の地区を希望するようになるという。

 いざ南関東からデビューしても、乗り鞍が少なければ、高知や笠松に期間限定で修行に出るというのも最近のパターンだ。

 であるならば、最初は騎手の数が少なく乗り鞍を得られやすいところからデビューさせ、いずれ能力に応じて南関東などに移籍できるようにすればいいのではないか、と、ある教官に話したら、そうしたことは考えてはいるという。しかしそれでは新人騎手を受け入れる競馬場は、騎手養成機関の延長のようになってしまう可能性があり、それはそれでまた難しい。

 中央は中央、地方は地方、しかも地方の中でも主催者ごとに独立した形で長い間行われてきた日本の競馬のシステムを変えるのは、なかなかに難しい。

 先々週の本連載でも騎手免許について書いたが、縮小傾向にある日本の競馬において、一定以上のレベルを保ち、さらには世界に遅れをとらないようレベルアップしていくには、どこかでそうした思い切った改革も必要ではないか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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