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福山競馬廃止の先へ

  • 2013年03月22日(金) 18時00分
 福山競馬の開催も残すところ今週末の2日間となった。公式サイトでもお知らせがあるように、最終レース終了後にはファイナルセレモニーが行われる予定となっている。

 残念ながらぼくはその最終日に現地には行けないので、荒尾のときのようにネットで公開してくれないものだろうか。また4月2日のグリーンチャンネル『地方競馬最前線』でも、そのセレモニーの様子をお伝えする予定なので、ご覧いただければと思う。

 その後の福山所属騎手では、楢崎功祐騎手と三村展久騎手が大井へ、佐原秀泰騎手が川崎へという移籍がすでに発表されている。また、正式な発表はまだないものの、何名かの調教師と、さらに何名かの騎手も、他地区への移籍が内定していると聞く。

 2001年に中津競馬が廃止となり、2005年の宇都宮競馬までいくつもの地方競馬が次々と廃止になったが、当時は騎手や調教師の移籍がなかなかうまくいかず、競馬場の廃止とともに多くの優秀な人材も失われてしまった。

 一昨年の荒尾、そして今回の福山では、それでも上位の成績を残している騎手や、やる気のある人たちの行き先が、ある程度とはいえ確保されるようになったことはよかったと思う。

 人だけでなく、馬の行き先の心配もある。福山競馬に所属していた馬たちの行き先ももちろんだが、長いスパンで見れば、これまで荒尾や福山で受け入れていたぶんの馬たちは、さてどこへ行くのだろう。

 地方競馬では、賞金の高い地区や中央で能力的に足りなくなった馬たちは賞金の低い場所へ、という馬の流れで全体のバランスが保たれてきた面がある。実際に、南関東に馬を預けている馬主からは、荒尾がなくなって、福山がなくなると、「馬の行き先がなくなる」という声も聞かれる。そうした馬たちの行き先がなくなれば、日本の競馬が底辺から崩れ、今以上に縮小が進むことは間違いない。

 競馬場の廃止とともに競馬が縮小し、レベルも低下してしまうというのは最悪のシナリオだ。

 競馬場が減っても、競馬全体のパイの縮小を食い止めるには、厩舎(調教師)の移籍もスムーズに行えるようなしくみが必要だろう。もちろんすべての厩舎がそのままどこかに移籍するというのは無理だろうが、例えば今回の福山であれば、周辺の兵庫、高知、佐賀など(あくまでも例えです)に何人かの調教師が厩舎ごと移籍できるような環境があれば、南関東や中央で能力的に足りなくなった馬たちや、ホッカイドウ競馬でデビューしたものの2歳のうちは力を発揮できなかったような馬たちの、その後の行き先がある程度は確保されることになる。

 今後さらに廃止となる競馬場がでてきたとしても、これ以上全体の頭数を減らさない、つまりは厩舎(馬房)の数を減らさないためのしくみは、あらためて考えておく必要があるように思う。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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