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ばんえいの1年を終えて

  • 2013年03月29日(金) 18時00分
 3月25日(月)の開催で、ばんえい競馬の2012年度の開催が終了した。

 その前日に行われたばんえい競馬のシーズンを締めくくる大一番、ばんえい記念は、これが引退レースで単勝元返しの断然人気に支持されたカネサブラックがギンガリュウセイの追撃を振り切り、一昨年に続くばんえい記念2勝目。ばんえい記念には名勝負が多いが、これも歴史に刻まれる一戦となった。

 カネサブラックが先頭で障害をクリアしたのはほぼ予想どおりだが、7歳のキタノタイショウが差なく続いたときは、

(おおおおおおおっ!タイショウかぁぁぁぁぁ!)

 と、心の中で叫んだ。

 やや離れて3番手でクリアしたのが、9歳ながらばんえい記念初挑戦のギンガリュウセイだった。そのギンガリュウセイがカネサブラックにぐんぐん迫ってきたときには、

(キターーーーーーーーーーーーッ!)

 と、これまた心の中で大声で叫んでいた。実際に声を出すことがなかったのは業務エリアにいたためだが、もしかして無意識のうちに声が出ていたかもしれない。

 カネサブラックは、この勝利で重賞通算21勝となり、スーパーペガサスの20勝に並んでいたばんえい重賞最多勝記録を更新。“王者”の称号にふさわしい強さを見せての引退となった。

 一方で、高重量戦を得意として頭角を現してきたギンガリュウセイがゴールラインを通過する直前まで接戦を演じたことや、今後のばんえい古馬戦線の中心となっていくであろうキタノタイショウが積極的なレース運びで盛り上げたことは、来シーズン以降のばんえい競馬にまた期待を持てるレース内容であった。

 さて、2012年度のばんえい競馬の売上げ104億9458万600円は、前年度比で1.26%とわずかではあるが増加。07年度にばんえい競馬が帯広単独開催になって以降では、前年度比で初めてプラスに転じたとのこと。また1日平均では、前年度より開催日数が1日少なかったため1.94%増となった。

 とはいえ2011年度(2011年4月〜12年3月)の開催は直前に東日本大震災があった。それゆえ4〜7月の1日平均の売上げは、その前年度との対比で5%ほども落ち込んでいた。それゆえわずかの増加という結果も手放しでは喜べない。

 ちなみに今年度の売上げを2010年度(2010年4月〜11年3月)の売上げと比較してみると、総売上では0.65%減、1日平均では1.95%減。売上げが下げ止まったとはいえない状況だ。

 主催者にも当然引き続き危機感はあるようで、その対策として2013年度は開幕初日の4月14日から(11月18日まで)いきなりナイター開催としている。ナイター開催は、中央競馬も含めた他の競馬と時間がずれるために売上げはいいようで、2011年度には51日間だったものが、2012年度は78日間、そして2013年度には95日間と、徐々に開催をナイターにシフトしている。

 しかし、主に週末に開催している地方競馬の他主催者は、昨年10月に始まった地方競馬IPATでの売上げに期待してメインレースを17時過ぎのわりと遅い時刻に設定する傾向にあり、そうなるとばんえい競馬にとってはナイター開催の効果が薄れてしまう可能性がある。

 帯広単独開催になってからのばんえい競馬は、いわば毎年が勝負の年だが、単独開催7年目となる2013年度は本気で結果が求められる厳しい1年となりそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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