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第二のステイゴールドとなるか?

  • 2013年04月19日(金) 12時00分
 ロゴタイプが朝日杯FS、スプリングSに続いて、皐月賞も制した。

 初勝利は2歳6月の新馬戦。続く7月の函館2歳Sで4着、8月のクローバー賞で3着、9月の札幌2歳Sで4着。とてもクラシックを意識した使い方ではない。層が薄いこの時期に、稼げるだけ稼いでおこうという使い方だ。

 確かに、それまでのローエングリン産駒のイメージとしては、ここらあたりがひとつの限界だった。だが、休養をはさんでM・デムーロ騎手に乗り替わった途端、馬が大変身を遂げた。埋もれた資質を引き出した名手に、ただただ脱帽するしかない。

 父のローエングリンはフランスの名牝カーリング(仏オークス、ヴェルメイユ賞)と、名馬シングスピール(ジャパンC)の配合で生まれている。内国産馬とはいえ、血統背景は世界でもトップクラスのものだ。

 マイルから中距離に強かったが、配合的には欧州のステイヤー血脈が凝縮されている。8歳まで48戦10勝と息長く活躍した秘密はそこにあったのだろう。

 だが、サンデー系の一流種牡馬でさえだぶついている昨今、非サンデー系の無冠馬に人気が集まるはずもない。2012年の種付料は受胎確認後で20万円。配合牝馬の数もかなり落ち込んでいた。

 ローエングリンの幸運は、社台ファームの生産馬であったことだろう。ロゴタイプの母系も、社台ファームが導入して日本に根づかせた名牝系だ。祖母のスターバレリーナはローズSの優勝馬で、近親にはアンドゥオール(東海S)、グランパドドゥ(中日新聞杯)、パドトロワ(キーンランドC、スプリンターズS2着)らがいる。

 ただ母は地方の園田で2勝したのみで、中央は未勝利。社台グループの繁殖牝馬としては、決してAランクとは言えないが、それでも他の牧場に比べれば血統レベルは高い。そんな繁殖牝馬をローエングリンに用意した社台ファームに対しても、やはり脱帽するしかない。

 とまれ、ローエングリンはこの皐月賞制覇で、明るい前途が開けた。かくなるうえは「第二のステイゴールド」をめざしてほしい。

血統評論家。月刊誌、週刊誌の記者を経てフリーに。著書「競馬の血統学〜サラブレッドの進化と限界」で1998年JRA馬事文化賞を受賞。「最強の血統学」、「競馬の血統学2〜母のちから」、「サラブレッド血統事典」など著書多数。

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