ロゴタイプが朝日杯FS、スプリングSに続いて、皐月賞も制した。
初勝利は2歳6月の新馬戦。続く7月の函館2歳Sで4着、8月のクローバー賞で3着、9月の札幌2歳Sで4着。とてもクラシックを意識した使い方ではない。層が薄いこの時期に、稼げるだけ稼いでおこうという使い方だ。
確かに、それまでのローエングリン産駒のイメージとしては、ここらあたりがひとつの限界だった。だが、休養をはさんでM・デムーロ騎手に乗り替わった途端、馬が大変身を遂げた。埋もれた資質を引き出した名手に、ただただ脱帽するしかない。
父のローエングリンはフランスの名牝カーリング(仏オークス、ヴェルメイユ賞)と、名馬シングスピール(ジャパンC)の配合で生まれている。内国産馬とはいえ、血統背景は世界でもトップクラスのものだ。
マイルから中距離に強かったが、配合的には欧州のステイヤー血脈が凝縮されている。8歳まで48戦10勝と息長く活躍した秘密はそこにあったのだろう。
だが、サンデー系の一流種牡馬でさえだぶついている昨今、非サンデー系の無冠馬に人気が集まるはずもない。2012年の種付料は受胎確認後で20万円。配合牝馬の数もかなり落ち込んでいた。
ローエングリンの幸運は、社台ファームの生産馬であったことだろう。ロゴタイプの母系も、社台ファームが導入して日本に根づかせた名牝系だ。祖母のスターバレリーナはローズSの優勝馬で、近親にはアンドゥオール(東海S)、グランパドドゥ(中日新聞杯)、パドトロワ(キーンランドC、スプリンターズS2着)らがいる。
ただ母は地方の園田で2勝したのみで、中央は未勝利。社台グループの繁殖牝馬としては、決してAランクとは言えないが、それでも他の牧場に比べれば血統レベルは高い。そんな繁殖牝馬をローエングリンに用意した社台ファームに対しても、やはり脱帽するしかない。
とまれ、ローエングリンはこの皐月賞制覇で、明るい前途が開けた。かくなるうえは「第二のステイゴールド」をめざしてほしい。