昨年から今年にかけて、海外修行が相次いでいるジョッキー界。「そういったチャレンジを、小牧騎手はどう思いますか?」という質問が、『太論』にも数多く寄せられています。このほか、馬の上下関係にまつわる話題から、小牧騎手が大好きな“お酒”での失敗談まで、今回も興味深い『太論』が満載!
■若いころは、本気でアメリカに修行に行きたかった──この春は、藤岡佑介騎手や池添騎手がフランスに行きましたね。去年も川田騎手がフランスへ、福永騎手がアメリカに行くなど、ここにきて海外修行が盛んになってきた印象がありますが、ユーザーからも「海外へ行くという試みについて、小牧騎手はどう思われますか?」という質問がきています。
小牧 若いうちはいいんじゃないですか。どんどん行ったらいいと思う。僕も若いころは行こうと思ってました。実際、曾和先生に「海外に行きたい」って本気で申し出たこともあって。でも、「海外に行ってどうすんねん」って言われたわ。「ここ(園田)で頑張ってるから、ワールドスーパージョッキーシリーズとかにも出られるんやで」って。そうやって説得されて、あきらめたんやけどね。アメリカに行きたかったんですわ。
──その後、赤木さんがオーストラリアに行かれたとき、一時期、小牧さんも行ってらしたんですよね。
僕も若い頃は海外に行きたかった
小牧 そうそう。ゴールドコーストで乗ったんやけど、いうたら二流どころが集まる競馬場でね。とにかくみんな必死なんですわ。だからもう、レースが危なくて。内を平気でこじ開けてきたりするから、僕も外枠からガーッと内に切り込んでみたり、いろいろやってみたんやけど、こっちが日本人なもんだから、ものすごくヤイヤイ言われて。でもまぁ、何を言ってるのかわからんから、全然へっちゃらやったけど(笑)。でももう、海外では競馬に乗りたくないなって思った。なんせ言葉がわからんし。
──オーストラリアはともかく、そもそもなぜ海外に行きたいと思ったのですか?
小牧 それは単純に、もっとうまくなりたいと思ったから。それなら、ダートが主流のアメリカに行きたいなって。だから、今海外に行ってるジョッキーたちの気持ちは、すごくよくわかるよ。今さら行こうとは思わんけどね。
──話は変わりまして、“お酒”についての質問です。「太論では、飲みに行ったお話がよく出ますが、お酒を飲み過ぎて大変なことになったエピソードはありますか?」というものです。
小牧 あるある(笑)。最近はすぐに記憶が飛ぶから、どなして帰ってきたんだろう…って、いつも思うわ(笑)。水割りとかを飲んでるぶんには割と平気なんやけど、ワインを飲み過ぎたら一発やね。
──失敗談で、一番印象的な出来事というと?
小牧 前にも話したことがあると思うけど、僕、眉間の少し上に傷があるでしょ? これは、ユタカくんがローズキングダムでジャパンCを勝ったときに、僕の行きつけのお店でお祝いをしたんやけど、帰りに店の前に置いてある植木に顔からぶっ倒れて。もう血まみれ(笑)。
──今でこそ笑い話ですけど、眉間近くなんて一歩間違えたら…。
小牧 目だったらアウトやね。危なかったわ。一緒に飲んでる人たちに言わせると、なんせ飲むとテンションが上がるらしいから(笑)。最近では、阪神のあとによく十三に行くっていう話をしたでしょ? 最後はいつも行くおっちゃんの店で飲むんやけど、2週続けて、どうやって帰ったのか記憶があやふややったわ。実際は、タクシーでちゃんとその日のうちに帰ってるんやけどね。店のおっちゃんが、僕をタクシーに乗せてくれてるんやね。いつも気が付いたら家の前やねん。タクシーのなかでは爆睡してるんやろうな(笑)。
──お酒が弱くなってるんですかね。
最近は弱くなっちゃって・・・
小牧 そう! すごく弱くなってる。昔は、朝方まで飲んでても全然へっちゃらやったんだけどなぁ。最近はもう、夜が苦手です…(苦笑)。
──続いては、競馬についてのマジメな質問です。「乗り手は馬にナメられたらいけないということですが、馬との上下関係は、どうやってはっきりさせるんでしょうか? 騎手によって、いろいろなテクニックがあるのでしょうか?」というものです。
小牧 ん〜、僕の場合は“気持ち”が一番やね。自分のほうが強いんだっていう気持ちを持っておくこと。馬には伝わるから。
──それでも、自分のほうが偉いと思ってしまう馬もいると。
小牧 言うことを聞かん馬はいるよね。とくに、女馬の我が強いタイプは一番難しい。とにかく言うことを聞かんから。だから、そういう馬は怒るよりなだめる。男馬は、ガンッ!と怒れば、言うことを聞く場合が多いけど。
──具体的に、どうやって怒るんですか?
小牧 声を出して叱る。子供と一緒です。女馬は、怒ると逆ギレじゃないけど、カーッとなってわけがわからなくなる馬もいるね。
──人間みたい…(笑)。
小牧 そう、人間と一緒(笑)。気のいいタイプの走る女馬は、とくに敏感ですわ。レジネッタとか、気性が荒かったもんなぁ。とにかくやさしく接することを心掛けて、なだめてなだめて乗ってましたわ。ホンマにいろいろ勉強させてくれた馬やね。
【次回の太論は?】
平安Sのナイスミーチューでは、8番人気の低評価ながら、王者ニホンピロアワーズに半馬身まで迫る大健闘! そのレース前後の心境や道中の回顧をはじめ、4月後半から5月中旬のレースについて、小牧騎手がじっくりと振り返ります。