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会員登録制のデメリット

  • 2013年05月24日(金) 18時00分
 前回は船橋競馬場内にオープンした新投票所を取り上げたが、今回は4月1日にオープンした船橋競馬の木更津場外『f-keiba木更津』について。

 地方競馬もネット・電話投票での売上げが全体の約4割を占めるようになり、最近では個人的にも馬券を買う目的で場外施設に行く機会はほとんどといっていいほどないのだが、羽田盃の日にトークイベントでf-keiba木更津に呼ばれ、いろいろと考えされられることがあった。

 f-keiba木更津は、千葉県のJR木更津駅前、ショッピングビルの地下にあった。ショッピングビルといってもテナントはかなり撤退してしまったようで、いくつかの飲食店が残っているだけで、ハローワークが入っていたのはちょっと印象的だった。東京駅まで約1時間半の、いわば通勤圏。地方都市では駅前シャッター街をいくつも見てきたが、首都近郊のそれなりの街の駅前でもこんな状態なのかとちょっと驚いた。

 まあ、それは競馬と直接は関係ないのだが、逆にそのおかげで駅前の一等地に場外馬券売場が設置できたということでは、ありがたいというべきかもしれない。

 そのf-keiba木更津で「えっ?」と思ったのが、会員制であるということ。公的な身分証明書などを示し、入会金500円、年会費500円を払って会員にならないと利用することができないのだ。友人などを連れて行っても、会員でないと一緒に入るということもできないし、子連れも不可だそうだ。

 それでも会員は順調に増えていて、現在1600名ほど。利用者は1日平均でだいたい200名ほどもいるそうだ。別料金の特別席(1日1500円、15席)も含めて発払機が計6台という小規模の場外施設としては、盛況といえるのではないだろうか。

 ネットでどこでも馬券が買える時代になったとはいえ、さまざまな理由でネットで馬券を買うことに抵抗がある人もいるだろうし、また定年でリタイアしたような競馬ファンの方々にとっては、コミュニケーションの場としてまことに快適に過ごせるスペースだと感じた。日常的に馬券を買うというファンなら、会員になるための計1000円という金額はどうということもないだろう。

 しかし、この駅前の一等地で、わざわざ会員にならないと利用できないというのは、なんとも残念というほかない。競馬初心者や、たまに馬券を買うというライトファンに対しては門戸を閉じているという状況といっていいだろう。

 理由を聞いてみると、警察との申し合わせでそうせざるをえなかったのだそうだ。他の公営競技まではわからないが、地方競馬の場外施設では、川崎競馬の場外、ジョイホース横浜も同様に会員制となっている。

 地域住民の安全や治安が理由だろうが、せめて会員1名に対して1〜2名程度の同伴は可能というようにはならなかったのか、もしくはこれからそうなってはくれないものだろうか。非会員の同伴者からは100円でも200円でも入場料を取るとかすれば、何度か通う人なら、新たに会員になる可能性が高い。

 今後もこうした民間委託の小規模場外施設は増えるだろう。しかしこのように警察の指導によって、「身分の明らかな会員しか利用を認めません」という前例ができてしまうと、あとに続く場外施設も横並びになってしまわないかということが心配であり、そうなってしまうのなら残念でもある。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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