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ダービーの日の違和感

  • 2013年06月07日(金) 18時00分
 地方競馬のイベントとして定着したダービーウイークも今日(6月7日)で全6戦が終了した。この原稿を書いている時点では、最後の東海ダービーの結果はまだわからないのだが、ここまで行われた5戦では、1番人気が2勝。そしてなぜか単勝4番人気が3勝と大活躍。強い馬が強い勝ち方をする“ダービー”も盛り上がるが、伏兵がその持ち味や個性を120%発揮して勝利をさらっていく“ダービー”もまた盛り上がる。

 たとえば大井の東京ダービーは、羽田盃を圧勝して断然人気となったアウトジェネラルの手ごたえが悪く伸びあぐねるなか、自慢の末脚を発揮してゴール前差し切ったインサイドザパークのレースぶりは見事だった。

 その東京ダービーだが、当日行われたイベントでは賛否両論さまざまな意見があった。

 最終レースとして行われた『ラスト・シンデレラ賞』では、同名のテレビドラマのプロモーションのため、出演する人気タレントが来場。大井競馬場には、それ目当てに多数の来場者があり、その最終レース後に行われるトークイベントのために、1レース前から賞典台の周辺で場所取りが行われるほどだった。

 そうしたことがきっかけで、競馬を知らない人たちがたくさん競馬場に来てくれるのはいいことだし、また競馬場には比較的安全で広いスペースがあるのだから、そうしたイベントをやるのは悪いことではないと思う。

 ただ、競馬そっちのけの人たちが異様なほどに集まってしまうイベントを、競馬最大のお祭りともいえる“ダービー”当日にやる必要があったのかは疑問だ。

 ともすれば、東京ダービーを食ってしまいかねない盛り上がり、というか騒ぎには、ちょっと違和感があった。

 それでも、その冠レースが東京ダービーのあとの最終レースで、さらにタレントが出てくるのも最終レース後だったということでは、配慮があったのかもしれない。

 しかしその最終レースの馬が走っている最中、おそらくそのレースを観戦するためだろう、タレントさんたちがL-WING最上階のテラスに出ると、それに気づいた大勢の来場者がスタンドの上のほうを見上げ、大歓声が上がった。冠レースとはいえ、走っている馬や騎手や、そして馬券を買っている競馬ファンに、そうしたことは関係ない。競馬関係者や、競馬ファンにとっては、少なからず違和感があった場面ではなかったか。

 たとえばそのドラマが競馬を題材にしているとか、競馬となんらかのつながりがあるなら、東京ダービーの日でもアリだとは思う。“ダービー”の日はそれだけで多くのファンが来場するのだから、競馬とはほとんど関係ないところで多くの人が来場するようなそうしたイベントは、むしろ競馬ファンの来場者が少ない日にこそやるべきではないだろうか。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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