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質問が多かった「安田記念での岩田騎手の騎乗」への太の見解!!

  • 2013年07月16日(火) 18時00分
いまだ賛否が飛び交う新裁決ルール。安田記念での岩田騎手(ロードカナロア)の騎乗(過怠金10万円)については、netkeibaにも多くの意見や疑問が寄せられました。この『太論』宛てにも、「あの騎乗をどう思いますか?」という質問が後を絶ちません。はたして小牧騎手の見解は!? ジョッキー目線で安田記念を振り返ります。
(取材・文/不破由妃子)

■ぶつけにいったのではなく、寄せにいったんやね

──今回、安田記念の岩田さん(ロードカナロア)の騎乗について、いろいろと質問がきていまして…。

小牧 ああ、ゴール前の外に張ったやつでしょ? いいとか悪いとか以前に、今は降着がないんでね。降着がなくなったということは、なんせ重賞やGIやったら、そういうことをしたとしても馬には迷惑がかからないからね。そのぶんジョッキーへの制裁は厳しくなったけど、岩田くんに限らず、あれくらいはやるんじゃないですか。

──以前、新裁決ルールになったときに、「やり得が増えるだろうね」っていうお話をここでしましたよね。

小牧 そうそう、その通り。そういうルールになったわけだから。もちろん、キレイに乗って勝つのが一番いいけどね。

──ユーザーの方いわく「昨年のジャパンCや今年の安田記念のように、相手の馬に体当たりをするような騎乗を小牧さんはどう思いますか? 自分たちから見るとかなり危ないように思うのですが、騎手にとっては当たり前の行為なのでしょうか?」と。

小牧 ん〜、やっぱり勝ちたいっていう気持ちがあるからね。寄せにいったりとか、そういうのは普通にあるよね。岩田くんも、安田記念のあれは外に寄せにいったんだと思うよ。

──少しアクションが大きくなってしまったと。

小牧 そうだと思う。

──たしかに重心を変えて修正しようとしていましたものね。だから過怠金で済んだのかなって思いました。

最初から馬体をぶつけるつもりはなかったと思う

最初から馬体をぶつけるつもりはなかったと思う

小牧 そうそう。ジャパンCにしても安田記念にしても、最初から馬体をぶつけるつもりはなかったと思うよ。

──「安田記念の最後の直線で、岩田騎手は意図的にダノンシャークに当てにいっているように見えるのですが、小牧さんの目にはどう映りましたか?」という質問もきているのですが、意図的に当てにいったわけではないということですね?

小牧 うん。当てにいったのではなく、押し出そうとしたんだと思う。うまく外に押し出せれば、自分が有利になるんでね。制裁を覚悟していたかどうかはわからないけど、今はそういう(降着にはならない)ルールなんでね。やっぱりGIのタイトルが欲しければ、あれくらいのことはするでしょう。僕もすると思う。

──ジョッキーとしては、あの騎乗はわかると。

小牧 そうですね。それで騎乗停止になるかどうかは、裁決委員が決めることなんでね。

──なるほど。岩田さんの場合、舞台がGIだったのと、アクションが多少大きくなってしまったから目立ってしまいましたが、寄せにいっているシーン自体は、それこそ当たり前のように目にしますものね。

小牧 そうそう、あれも寄せにいってるということ。

──相手が外に動かざるを得ない状況を作ろうとした結果、馬体が当たってしまったと。

小牧 うん、そうだと思う。ぶつけにいったわけではないと思うよ。ぶつけにいったりしたら、どちらの馬も怯んでしまうんでね。自分の馬にもいいことないから。

──先日(6月9日・阪神9R・マイネルアクロス2着)、和田さんが騎乗停止になったレースのパトロールはご覧になりました?

小牧 ああ、見ました。あれはムキになってしまったんやろうね、スペースを確保したくて。でも、(相手の)川田くんにしてみれば、和田くんを出したくない。その気持ちはわかるわ。結果的に、お互いムキになってしまったんだと思う。

──パトロールを見ると、けっこう壮絶でしたものね。

小牧 でも、あれが危険行為になるんやなぁ。ようわからんけど、あれがなんで騎乗停止になるのか…。でもまぁ、あれを認めてしまったら、なんでもアリになってしまうかもしれないね。

──最後の最後に川田さんの馬がもう一度伸びかかってるんですよね。だから、川田さんの馬が先着した可能性がある、という判断だったんでしょうね。

小牧 そうでしょうね。それにしても、今思うと、園田では荒っぽい競馬ばっかりでしたわ。たとえば、一番内にいるとするでしょう。で、4コーナーでは外からマクリにくる馬がいますやん。で、内にいたはずが、ゴール前ではいつの間にか外ラチのほうにいるっていうね(笑)。そういう競馬ばっかりやったよ。

──それは、内にいるジョッキーが押し出して押し出して…。

小牧 そうそう、押し出すねん。しかも肘でね。あとは、逃げてるときにお尻をピュッピュとわざと振ったり。ちょっと振るだけで、後ろの馬は逃げるからね。そんな競馬ばっかりやったな。

──でも、それもテクニックのひとつですよね。

小牧 うん、当時でいえばテクニックやね。まぁ肘で突いたりするのは、本来はダメだけど。

──中央でも、4コーナーでわざと外に張っていくシーンはよくありますものね。

裁決もようわからんわ

裁決もようわからんわ

小牧 そうそう、それもテクニックだからね。園田時代は、ホントによくやってた。決してそれがいいとは思わんけど、当時はずる賢く乗れっていわれていたからね。

──結果的に、岩田さんはセーフで和田さんはアウトになった。それを「なんで?」っていぶかしんでいるユーザーが多いようです。

小牧 ん〜、人間が決めることなんでね。裁決委員も…ようわからんわ。こればっかりは、本当に難しいね。

【次回の太論は!?】
 この春、新人の原田敬伍騎手が、体重調整に失敗してレース当日に熱中症で倒れるという出来事がありました。それについてユーザーから「ジョッキーはレース当日も体重を落としているのですか?」という素朴な質問が。太論では、これまでも度々話題に上がってきた“体重管理”ですが、その辛さを知っている小牧騎手が、改めてジョッキーとしてのその重要性と苦悩を語ります。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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