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ドナウブルー、フレールジャックなど中京記念分析

  • 2013年07月16日(火) 18時00分
 最近、いろんな方(競馬関係者)から「栗東の坂路って時計が速くなっているみたいですが、何かあったんですか?」と質問されることが多くなっています。しかし、坂路馬場はウッドチップの入れ替えなど、明らかに追い切り時計が速くなるような変化はありません。ただ、梅雨明けあたりから、夏場にかけて、基準時計よりも速くなりやすいのが、この時期の栗東坂路の特徴と言えます。

 その要因として考えられるのが「適度な湿り気」。ウッドチップは乾燥しすぎると、上滑りしやすく、しっかりとグリップできないということが起こりえます。そうなると、走りにくい状況になるので、時計が出ない状況に。実際、雨が降らず、ウッドチップが乾燥すると、水を撒くということを行います。

 ちょうど梅雨が明けた、この時期は、適度な夕立などがあり、調教を開始する時間帯には、ウッドチップに適度な湿り気があります。これがグリップ力を強くし、結果的に速い時計を出しやすい状況をつくっています。

 冒頭の質問と一緒によく聞かれることが「時計の出やすい馬場で、速い時計を出しても、あまり参考になりませんよね?」ということ。これには「追い切り時計が遅いからといって、調子が悪いとは限りませんが、追い切り時計が速ければ、調子は確実に良いですよ」と返答させてもらいます。いくら走りやすい馬場だったとしても、体が動く状態、調子が良くなければ、速い時計など出ません。

 ちなみに、先週の当欄でバーデンバーデンCに出走したマイネルエテルネルを取り上げたことを覚えていただいているでしょうか。9日の登坂の様子を「元気よく、乗り手も引っ張り切れないくらいの手応えで駆け上がったのが、今朝の坂路のキャンター。暑い時期は大の得意かも知れませんから、状態面からは強調できると思います」と書かせていただいたのですが、それを象徴するように、翌日の追い切りでは、自己ベストを1.8秒も更新する、坂路4F50.1秒という時計をマークし、小倉2歳S以来の勝利となりました。

 先週はマイネルエテルネル以外にも、自己ベストを更新してレースへ出走した馬は多数いましたが、そこそこ馬券になっています。時計が出やすい馬場だから、あまり時計を参考にしない方がよい、などと思わずに、きっちりとした比較対象を見つけた上で、今回の時計を判断できると思います。

ドナウブルーは文句ない動き

ドナウブルーは文句ない動き

 今週の中京記念には、坂路での追い切りで自己ベストを更新してくるような馬がいるかどうか分かりませんが、1週前追い切りの時点で確実に状態が良いところをアピールしたドナウブルー。先週のレースで勝っているニューダイナスティを相手に、楽な手応えで先着。この馬の場合、最終追い切りよりも、1週前追い切りで併せ馬先着が好走凡走のバロメーターになるだけに、これは文句ない動きだと言ってよいでしょう。

 今朝16日の登坂の様子を見ていても、実に落ち着きがあって重厚な感じ。1本目の登坂後、エクスペディションと一緒に歩いている姿を確認しましたが、牡馬と牝馬の差があるとは思えないくらい、むしろドナウブルーの馬体の方が目立っていました。見た目の状態に関しては、強調材料しかありませんが、問題は調教本数。パワーのいる中京競馬場で、この調教本数は致命的になりかねません。

好走のイメージが沸くフレールジャック

好走のイメージが沸くフレールジャック

 現時点で注目しているところでは「やっと重賞に使わせてもらえる」と友道康夫調教師が話すフレールジャック。朝日CC以来、オープン特別ばかりと使っていましたが、これは賞金的に重賞への出走が叶わなかっただけ。そもそも、ラジオNIKKEI賞を勝っている重賞ウイナーであり、格負けするということはありません。

 この中間は、坂路、CW、DPを併用しての仕上げ。今回、初騎乗となる藤岡康太騎手が跨った先週の追い切りは「追い切りでこんなに脚をためていくことできるんだ」と感じた走り。全体時計は遅いものの、緩急をつけることができたということが、この馬の爆発力に繋がるはず。外が伸びる今の馬場状態を考えると、ニューイヤーSのような競馬をしてくれると、好走のイメージは沸きます。

◆次走要注意

・7/13 中京11R 関ヶ原S【ホッコーガンバ】(6人/6着)

 スタートして、すんなりハナを奪っていける先行力は武器。逃げ切ることが難しいコースでのレースが続いているだけに、この成績も仕方ないところ。小回りの芝2000mあたりなら、あっさり逃げ切り勝ちも十分に可能でしょう。

[メモ登録用コメント] 調教タイプが標準多め併用なら勝ち負け

・7/14 中京5R 2歳新馬【ロードストーム】(2人/3着)

 2番人気に支持されながら、3着に敗れているだけに、高い評価はできないデビュー戦。出遅れて、3コーナーから外を回って、直線伸び切れずという内容だけ見れば、こんなもんかという感じでしょう。
 ただ、スピードに任せて走り切ってしまうようなタイプでなかった点は、今後に向けて収穫だったように思います。次は、まともにスタートして、好位から押し切る競馬ができるはずです。

[メモ登録用コメント] 調教本数が標準以上なら勝ち負け

◆今週末馬券圏内

・7/21 中京10R 中京2歳S【グランシェリー

 新馬勝ちがダート戦だっただけに、芝への対応が最大の鍵になることは承知の上。ただ、坂路での追い切りは、常にラスト1Fが速くなるようなラップが踏めており、その上で、4F時計が速いという、いかにも芝短距離で活躍する馬の動き。
 ここで好走すれば、今後は人気を背負う存在になるでしょうから、芝初戦の今回こそが、馬券的な狙い目でしょう。

[メモ登録用コメント] 最終追い切りが坂路終い最速ラップなら勝ち負け

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調教をスポーツ科学的に分析した適性理論「調教Gメン」を操る調教捜査官。著書に「調教Gメン-調教欄だけで荒稼ぎできる競馬必勝法」「調教師白井寿昭G1勝利の方程式」「100%激走する勝負調教、鉄板の仕上げ-馬の調子、厩舎の勝負気配は調教欄ですべてわかる」など。また「Beginners room」では競馬ビギナー向けに教鞭をふるう。 関連サイト:井内利彰ブログ

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