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IPAT効果で1割アップ

  • 2013年07月26日(金) 18時00分
 今年度になっての地方競馬の売上げが好調だ。数字を見て、ちょっとびっくりしたほどだ。

 4〜6月の前年同期比で、全国の合計額では106.7%。ひとつ競馬場(福山)がなくなっているにもかかわらずだ。1日平均ではなんと112.6%と、1割以上もアップしている。

 競馬場ごとのデータを見ても、多くの競馬場で1日平均で前年比110%を超えているのだが、顕著なのは高知だ。総売得額で123.0%、1日平均では128.2%となっている。ちなみに昨年度(2012年4月〜2013年3月)の前年比ではようやく100%を超えた競馬場がいくつかあったという状況で、やはり高知だけは総売得額115.8%、1日平均でも113.4%という数字を記録していた。これによって高知は、わずかではあるが今年度の賞金がアップされている。

 この売上げアップは、やはり昨年10月にスタートした地方競馬IPATによるところが大きいと考えられる。電話(ネット)投票での売得額の伸びがきわめて大きいからだ。

 中でも電話投票の伸びが顕著なのは、岩手(盛岡・水沢)の209.3%と、佐賀の193.4%。この2主催者の共通点は、中央競馬が開催されている土日と開催日が重なっていること。ほかでは、ほぼ土日開催の高知が143.9%で、日曜日のみほぼ毎週開催している金沢が179.0%となっている。高知の伸びがやや少ないのは、ナイター開催のため全レースの半数程度しか地方競馬IPATでの発売がないからだろう。そう考えると、地方競馬IPATの恩恵が大きいのは、中央と開催日が重なる週末開催の競馬場だったといえそうだ。週末以外にもIPATで地方の馬券が買えるようになったといっても、やはり中央競馬のファンが習慣として競馬をやるのは週末で、中央競馬からの流れで、地方も買ってみようというファンが多いと想像できる。

 とはいえ基本的には平日開催の競馬場の中でも、名古屋、兵庫の電話投票は、ともに140%台で、門別も130%台と伸びている。

 この4〜6月の伸びが大きかった要因としては、中央でほぼ毎週のようにGIが行われていて、競馬への参加人数が多かったということも考えられる。このあたり、7〜9月の数字がどうなるのかにも注目したいところだ。

 最初に、多くの競馬場で1日平均の前年比が110%超と書いたが、一方で前年割れしている競馬場が2つだけあり、それがなんと船橋と大井で、それぞれ98.1%、92.8%となっている。地方競馬の中でも突出して売上げが大きい大井の7.2%減というのは、なんともショッキングな数字だ。とはいえ浦和と川崎が110%を超えていて、南関東全体では100.7%と、かろうじて前年のレベルを維持している。

 南関東があまり地方競馬IPATの恩恵にあずかれなかった(と思われる)理由としては、そもそも南関東はいくつもの地方競馬で場外発売が行われていた上に、以前からSPAT4の電話投票会員が全国に広がっていたことが考えられる。また南関東は他の主催者と比較して発売額自体が大きいので、その分母に対して地方競馬IPATで売れた額がそれほど大きいものではなかったということもあるだろう。いずれも、あくまでも想像の域を出ない要因ではあるが。

 地方競馬IPATがスタートして、あと2カ月ちょっとで1年。この1割アップが、さらに1年後になったら平行線だったり減少に転じることのないよう、さらなる情報提供の充実や、売れるための工夫は必要だろう。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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