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アグネスタキオン産駒の馬体減り

  • 2013年08月14日(水) 18時00分
 レパードSに出走していたジェベルムーサの場合、550キロの巨漢馬だったが、6キロ減の馬体重発表時点で、ほぼ凡走は確定した。

 同馬は量と体力で走るアグネスタキオン産駒。単調なパワーで押しきるのが基本で、その自慢の体力が損なわれる馬体減は、本質的に嫌がる。ただ休み明けを叩いての2戦目は、どういうタイプであれ、絞れた方がよいケースが多い。

 同馬の場合は、事情が少し違っていたのだ。

 デビュー戦を562キロで1着。この時点で仕上がっているので、そこから比べると12キロ減の550キロは、今回の増減が6キロ減でも、自慢のパワーを損なう、かなり危ない数字になるのだ。

 またアグネスタキオン産駒は、連載でも何度も書いてきたように疲れやすい。このあいだ解説したダイワメジャー産駒やゼンノロブロイ産駒と同じでストレスに弱いのでフレッシュ時に強く、タイプ的には量系のゼンノロブロイ産駒の方に近い。こういうタイプが、疲れがないので得意とする休み明けを走った後、馬体が連対時最低馬体重を下回るのは、疲れの影響が出やすくなるので、かなり危険なのだ。

 さらには同馬の脚質も気になる。

 このあいだの連載で、逃げ、先行というパワー型の方が馬体減りはよくないと書いたが、同馬は差しだ。だがこの差しは、逃げ、先行とほとんど本質が変わらない形だったのだ。

 どういったことか?これまでの走りを詳しく見ていこう。

 前走の福島以外は、4戦全て差し。そのうち、連対した3戦は4角10番手以降からの追い込みだった。しかも東京である。つまり広くて単調な流れになりやすい東京で追い込むという、逃げ、先行と同等か、それ以上に揉まれない戦法を取ったときに、好走しているのだ。

 ただ、追い込み好走だけでは、単にキレ味勝負の馬という判断も可能だ。というか、その可能性の方が高い。

 決定的なのは前走の小回り福島での捲り勝ちになる。

 ゼンノロブロイ産駒の解説で書いたように、捲りは揉まれずに一気にパワーを使う競馬なので、力が他馬より上ならば、揉まれたくないパワータイプの小回り戦では、ベストな戦法になる。捲りの本質はほとんど逃げ、先行と変わらないのだ。

 このようにジェベルムーサは、その戦績の全てにおいて、揉まれずに量とパワーを活かすという典型的なL系アグネスタキオン産駒の走りのそれなのである。

 そうであるならば、相手強化、休み明け激走の衝撃という、アグネスタキオン産駒が苦手とする悪条件をクリアするには、量や体力を武器とするL系の過去最低馬体重というのは、あまりにも荷が重い。

 550キロある馬だから、増減の影響が少ないと考えるのは、この場合は危険すぎる。絶対的な馬体重がどうこうより、疲れによって同馬の生命線である自慢の体力が消耗してしまうかどうかの瀬戸際で、疲れている方向に舵が切られてしまったことを端的に表してしまった6キロ減なのだ。

 絶対値として細いとか太いとか、適性馬体重がどうかとかは、この場合、あまり意味がない。重要なのは心身状態が向いている方向、飽くまで今現在、彼が位置しているその心身ベクトルが、今の彼にとってプラスなのかマイナスなのかなのである。

 馬体重発表以前に、相手強化、休み明け激走の衝撃というアグネスタキオン産駒が苦手な条件が揃った時点でこの人気馬は危なく、インカンテーションの単勝期待値は相対的にかなり高まるという読みで、敢えて1番人気を本命にしたのだが、6キロ減の発表はさらに勝負を後押しした。

 馬体重発表で人気の一角の凡走がほぼ確定したため、より多くの単勝をインカンテーションに投じることが出来たのである。

 このようにステップとタイプを念頭に、馬体重を見て勝負レースを選択する方法が、馬券においてはかなり有益なのである。

※M3タイプ
L(淡泊さ)
淡泊さを持つ馬。自分のペースで淡々と走ろうとするタイプの馬で、距離の延長や少頭数、広いコース、外枠、弱い相手との競馬が有効。Lの由来は「Light」の頭文字から。

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※正誤表が競馬王ブログに掲載されています。

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ストレス、ショック療法など、競走馬の心身構造を馬券にする「Mの法則」を発見し、従来の競馬常識を完全に覆した。現在は、競馬雑誌等で活躍中のほか、馬券研究会「Mの会」を主催し、毎週予想情報の提供を行なっている。主な著書に「短縮ショッカー」、「ウマゲノム版種牡馬辞典」、「ポケット版 大穴血統辞典」などがある。

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