新潟のレパードSをインカンテーションが勝った。父のシニスターミニスターはあまり聞き慣れない種牡馬である。しかし、2世代目を送り出した昨年の2歳戦は、なかなかの存在感を示していた。
下級戦ながら、産駒が毎週のようにダートで好勝負。12月を迎えた時点で、JRA2歳戦で出走13頭中6頭が勝ち上がり(2頭が新馬勝ち)、地方でも7割の勝ち上がり率を記録した。産駒の仕上がりの良さと、ダート適性の高さには目を見張るものがあった。
そのシニスターミニスターは2歳の12月にアメリカでデビュー。2戦目に後続に8馬身の差をつけて勝ち上がっている。さらにGI初挑戦となったケンタッキーダービーの前哨戦、ブルーグラスSでは史上3番目となる12馬身4分の3の着差で圧勝。派手な勝ちっぷりでGI初制覇を成し遂げている。
ところが、その後は鳴かず飛ばず。おかげで投げ売り状態となり、日高の生産者グループが150万ドル(当時約1億7300万円)という破格の安さで購入した経緯がある。
父のオールドトリエステが地味な存在だったことも、安さの一因にあっただろう。米GII勝ちしかなかった馬だが、他にシルヴァートレイン(BCスプリント)を出すなど、種牡馬としてはなかなかの滑り出しだった。
しかし、蹄葉炎が原因で2003年1月、わずか3世代を残したのみで急死。2007年以降は種牡馬成績も急下降し、すっかり忘れ去られてしまっていた。
ただ日本では、その数少ない産駒の中から外国産馬のマルターズヒート(フェアリーS)、トーヨーエーピー(芙蓉S)らが活躍。日本の競馬環境に高い適性を示していたことは確かだ。
アメリカで通算12戦2勝の成績とはいえ、2勝(うちGI1勝)の内容は、高い潜在能力を示すもの。種牡馬となって、うまく日本向きの資質を産駒に伝えている。
配合牝馬に恵まれなかったが、インカンテーションがレパードSを勝ったことで、来年の繁殖シーズンは質、数ともにアップすることだろう。この掘出し物の真価発揮は、まだ数年先のことになるが、ダート戦では印以上に堅実に走る。今から追いかけてみるのも悪くない。